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「えっ!? そうなの。で、お母さんは大丈夫なの?」
「それは大丈夫。およねさんは新地にいる友達のママさんのところにしばらくいるって言ってたからよ」
「そう、それなら良かったわ。寛太さんも、気をつけてよ。じゃあ、後でメールお願いしま~す」
「よっしゃ、よっしゃ。あと、家、見てきたらどんな風になってたか教えてくれよ」
「りょうか~い。じゃあまたね」
アンナは電話を切るなり、急いで皆に報告をしだす。それも興奮した口調で。
「ちょっと、あっちは大変よ。あいつらが私の部屋の特殊メイクに使う道具を見つけて。それでね、いろいろ詮索したのか知らないけど、他の住人とかにもそのことを聞きまわってるらしいの」
「そのことって?」
紗綾が訊ねた。
「だから、紗綾ちゃん、私があなたを変装させて逃がしたんじゃないかって言ってるらしいのよ。まあ、本当のことだけど…」
それを聞いた善三が、弁当の風呂敷をたたみながら落ち着いた物言いで話しだす。
「そうか、奴等も切羽詰まってきたっていうことやな。それで、およねさんは大丈夫なんやってな」
「そう、聞いてたでしょ。それは良かったんだけど、私もしばらく帰れないわね」
「アンナさん、ごめんなさい。、私のせいで」
「だから、そんなこともうどうでもいいのよ。とにかく今は、録音データを手に入れないと。紗綾ちゃんは、そのことだけを考えてなさい。それに後、一週間はあのホテルに宿泊できるんでしょ」
ホテルのラグジュアリーや美味しい料理を思い浮かべアンナはニタッと微笑んだ。
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