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不思議な少年だ。気がするだけで、なぜ寛太の実家に行った方がいいと言えるのか。でも、夕方まで時間をもて遊ぶ、彼の気まぐれに付き合ってもいいのかも。
そんなことを考えていたら、高槻の豪快な笑い声が聞こえてきた。
「あ~うまかった。こんなええもん食ったら後で腹壊したりしてな…ガハッハハハ」
「ふっ、せやな。けど、ほんま美味やったな。ん? 涼平、残してるやん。腹減ってなかったんか?」
涼平のお弁当をのぞき込んだ善三が少し心配そうな表情を浮かべた。
「俺、好き嫌いが激しいから。これ、善三さんか高槻のオッサン、食べるか?」
「もう、ワシは腹ふくれたしええわ」
そう言って善三は高槻の方に目を向けた。
「えっ! ほんま、マジでええんか!?」
「ほら、食えよ」
涼平は、半分以上残したお弁当をすべて高槻にほいっと渡す。中身を見ると魚と肉しか食べていない。どれもこれも美味なのに。ワガママに育ったのか、それともアレルギーもちなのか、わからないまま、見て見ぬふりをする紗綾。その隣に腰かけていたアンナは、どうでも良さそうに箸を箸袋に仕舞い込んでから手を合わせている。
「ごちそうさまでした。ああ、しあわせ~ほんとに美味しかったわ~。それじゃあ、寛太のおじさんに電話してみるわね」
「うん、頼んだぞ」
年の割には偉そうな涼平。でもなぜか、他の大人達は怒っていない。不思議な少年だ。物音ひとつさせないし、気配もあまり感じない。さっきも、鍵がかかった家にどうやって入ったというのか。それに、悪い人達の目をどうやってかわしてきたのか…
ちょっと変わった男の子だと思いつつ、紗綾は涼平の存在が気になりだした。それは恋愛感情などではなく、単に天然記念物や恐竜の化石などを見て知ったときのような興味だった。
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