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このとき藤木は、なぜこんなところに八雲が現れたのか、それに渦中の奴達と関係あるのかもわからずにいた。
だが、何かの拍子に藤木の直感が働いた。おそらく八雲は、あのオカマ達となんらかの関係がありそうだ。八雲と一緒にいた若い男も、もしかしたら……
そんなことを考えながら、尾崎のチクチクとした嫌味を適当に受け流し、急に話題をかえた。
「尾崎さん、さっき言ってた八雲が目の前に現れたんですわ」
「なに!? 噂をすればなんとやらですか…」
「いや、ちょっと前ですわ。あの時と比べて髪の毛が薄くなってたんで気づかんかったんですが、さっき尾崎さんから八雲設備の話しを聞いて思い出したんですわ!」
「そうか、これは飛んで火に入る夏の虫になるかもしれませんね。では早速、わかってますよね?」
「もちろんですわ。奴がどっかに隠してる証拠書類を見つけたらいいんですね。ですが、もうとっくにあの件は時効を迎えてるのと違いますの?」
「そう、時効は成立してる。だがな、週刊誌やマスコミにリークされたら当時の大臣やらにも迷惑がかかるからな」
「そういえば、あのとき大臣やった人は、今は副首相になってますからね」
「藤木さん、もし彼が書類の在処を吐かなかないようでしたら、そのときは、いっそのこと……よろしいですね?」
「わかりました。あと今探している娘も例の物の在処を吐かなかったら……で、かまいませんか?」
「そうですね。いつまでも、その小娘にもかまってられませんからね」
電話を切った藤木。奴等がいた場所に何か手がかりがないかを探しだす。目を閉じ、さきほどの八雲達の行動を思い返した。とたん、直ちに近くにいた部下の一人に話し、指示をだす。
「おい、ちょっと前に事務局から出てきたハゲのオッサンがおったやろ。そのオッサンが、あそこのゴミ箱に紙袋みたいなんをほってたのを見てたか?」
「へい、見てました」
「それを拾ってきてくれ」
藤木は、即座に届いた紙袋に目を落とし、英語で印字されている文字を読みあげた。
「ん? コンレットベルヴューホテル?? ──なぜ作業服を着ていた八雲と若い男が、こんな高級ホテルの紙袋なんか持っとたんや……?」
「えっ、ボスなにか言いましたか?」
「いや、なんでもない」
藤木はその紙袋を見つめ、しばし考え込んだ。
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