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そんな苦い経験を紗綾の運命と照らし合わした善三。だが、そんな善三を見て、アンナは依然として訝しげな表情を浮かべていた。
「ゴメン、善三さん、やっぱり納得できなくて…どうも腑に落ちないっていうか、だってそうでしょう、紗綾ちゃんが当てた宝くじを狙ったところで窃盗になるわよね。なんでわざわざそんな警察に捕まるようなリスクをおかしてまでって思ったの」
「そうやな、ワシもそのへんのとこがまだわからんねん。でも、奴等のことや、ここまでするってことは絶対になんかあるはずなんや」
そのようなとき、「あっ!」というドデカイ声が皆の耳に響いた。さっきから、この2人の会話を黙って聞いていた高槻な突然、閃いたように声をだしたのだ。
「あービックリした。なによ! ゴリのオジさんいきなり~、もぉ~おしっこチビっちゃったじゃないの。シート汚しちゃったかもよ」
「えっ! うそやろー!?」
「嘘よ、で、どうしたのよ?」
「いや~スマンスマン、そのカラクリがわかったんやって! わしもラト10買ってたからわかったんやけど、もしも今回の当選者が現れへんかったら次回繰り越しになって、確か…当選金額が80億か85億に跳ね上がるはずなんや」
それを聞くなり、今度は善三が車のガラスが振動するほどの大声を張り上げた。
「それや !!」
「もぉぅ~、ほんとにチビッちゃったじゃない」
再びアンナが言うと高槻が反応する。
「マジでか!?」
「嘘よ、ちょっびっとだけよ」
「マジで!」
すべての点が線でつながった。まさか、過去に因縁があった奴等が今回も現れるとは夢にも思わなかった。善三は、つくづく世の中の狭さに気づかされたのと同時に、運命に翻弄されている自分の人生に仰天する。
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