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「じゃあ決まったようやし、今から亀岡に向かおうか」
さっそく高槻が亀岡方面にタクシーを走らせようとする。が、なぜか善三が、待ったをかける。
「いや、先に警察に行こう。紗綾ちゃんが被害届をだした警察署に行った方がええわ」
「そうね、その方が良さそうね」
アンナも善三に賛同する。次いで善三がさっきから言いたかったことを紗綾に告げた。
「紗綾ちゃん、あのな、さっきワシが言いかけてたんはな、どうも紗綾ちゃんを襲ったんはただの引ったくり犯とは、ちゃうような気がしててな。それと紗綾ちゃんの服を剥ぎ取った奴と、家を荒らした奴もな」
「えっ、善三さんどういうことですか?」
「さっき、紗綾ちゃんが橋爪リサーチで働いてたって言うたやろ?」
「はい…それが?」
「ふむ。その名前を聞いてちょっと思いだしたことがあったんんや。──ワシ、昔にその調査事務所に仕事を依頼したことがあってな……あのな、これはあくまでもワシの仮説やねんけど、紗綾ちゃんの当たりくじを狙ってんのんは元彼氏だけやのーて、おそらく宝くじの当たり番号を抽出する機械の製作メーカーの奴等もあると思うわ」
誰もが、そんなことを思いもしなかった。機械メーカーの人達の仕業だったなんて、考えが及びもしなかったのは当然のこと。でもここで疑問が生じた。まさか善三が、伊達や酔狂で言っているのではないとはわかる。だがなぜ、善三がそう思ったのか? 皆が小首をひねった。
「善三さん、それは一体どういうことかしら?」
アンナは、聞かずにはおられなかった。
「ふむ、さっきの運転免許センターで待ち伏せしとった奴の中に、ワシに嫌がらせしてた奴がおったんや。初めはわからへんかってんけど、さっき橋爪リサーチの名前を聞いて、思いだしたんや。──で、免許センターで会うたそいつはな、ワシの仕事を奪った奴に雇われとった奴やったんや。それでな、そいつらと総務省の役人とが癒着してワシの会社を退けもんにしよってな……今回の犯人はそいつらやとみて間違いないと思うわ」
「……は? 意味がわからへんって。善三さん、もっとわかりやすく言うてって。全然、話が見えてけーへんわよ」
よくわからないことに苛立ちを覚えたアンナは、善三から納得いく説明を早く聞きたがった。
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