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──ピコン──
「ほら、返信が返ってきたわよ」
先程の出品者からだ。すぐさまアンナは受け取り場所のやりとりをする。
──ピコン──
「ん? 紗綾ちゃん、こいつ亀岡まで来てくれるって言ってきてるんだけど、ここから亀岡は近いの?」
「そうですね、車なら四、五十分ぐらいですかね」
「どうする?」
アンナが全員の顔を見渡し、みなに相談するように話しかけた。少しの間、沈黙が流れるも、善三が紗綾に話しかけた。
「紗綾ちゃん、そのパソコンかスマホの中に元彼氏とのやりとりがまだ残ってるんやろか?」
「やりとりって?」
「せやからな、元彼氏が手切れ金やいうて宝くじを渡されたって言うてたやろ。その会話がまだスマホとかに残ってるかどうかを知りたいんや」
50億の当たりくじが手元に戻り少し安堵していた紗綾。そんな呑気な紗綾に善三は、苛立ちもせず焦りもせずに優しく問いかけたのだ。
「うーん、それはどうでしょう。パソコンを売ろうとしてた時だったんでパソコンは初期化したんですよ。でも、スマホはなにも触ってなくて……けど、多分、犯人がデーターを全部消してるでしょうね。だからもうパソコンとかはどうでもいいんで、早く銀行に行く方がいいんじゃないかな……」
今この瞬間、紗綾は早く銀行で手続きをして確実なものにしたかった。惠介のことは後でおいおい考えれば良いのではないかと。とても大切なことなのに後回しにしようとする。かなり舞い上がっている紗綾は、まともな判断ができないでいた。
しかし苦い汁をたくさん飲んできた善三は後々揉めそうな事を放置さすわけにはいかなかった。紗綾のことを想ってのことだ。
「いや、ちょっと待てよ。確か消されとっても智明やったら復元できるんとちゃうか? なあ、アンナちゃん、慎太郎、あいつ前にそんなこと言うてへんかったか?」
智明とは、現在、出稼ぎに行っている善三達の仲間の1人だ。あいりん地区に来る前は関東の方でプログラマーとして働いてたようだ。削除したデーターを復元できるスキルをもっているらしい。
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