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「えっ!! うそっ、まじで!!!」
後部座席の真ん中に座った紗綾は、そのビニール袋の中身を見るなり、おもいっきり涼平に抱きついた。
「おいおい紗綾、嫁入り前の娘が、そんな簡単に男と体を触れ合わせたらあかんやろ!」
(若者なのに年より臭いことを言って、いったい涼平君っていくつなんやろ?)
そう思いつつも紗綾は危険をかえりみず、大事なものを取りに行ってくれた涼平に抱きつかずにはいられなかった。そんな紗綾を涼平は優しく引き離し、おもむろに当たりくじを手渡した。
「ほらよ」
「ありがとう涼平君、ほんとうにありがとね。このお礼はちゃんとするからね。でも、どうやって入れたの?」
「ふっ、そんなん忍法すり抜けの術に決まってるやん。フッフフ」
左の人差し指を立てて右手で覆い被せる涼平。忍者の印を真似て見せた。でもなぜか笑っているようで目だけは笑っていなかった。
「そうなのね、よくわからないけどほんとうにありがとね」
今にも大粒の泪をこぼしそうなぐらい紗綾の瞳が潤んでいた。夢がすぐそこまで見えてきた。もう、この当たりくじを銀行に持っていくだけで50億が手に入る。
このとき一気に緊張の糸が切れしまった紗綾は、この上なく感極まった。皆がいるというのに大声でわんわんと泣きだしたのだ。
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