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「大ちゃん、ほんとうに、ごめんね迷惑かけて。もう、こんなこと二度としないから、今日は大目にみてくれてありがとう、ほんとうに助かりました」


「だから、気にすんなって。──あっそうや! じゃあ紗綾、今度、飯でも付き合ってくれよ」


「うん、いいよ。じゃあ、さっきのアドレスに連絡してね」


 元々、二人は仲が良かった。どちらかというと大輔の方が紗綾のことを気に入っていた。中学時代、大輔は紗綾と付き合いたいと思っていた。片や紗綾の方もまんざらでもなかったようだ。けれど、当時は2人とも稚拙(ちせつ)だったため恋愛にまでは発展しなかった。


 そんな2人は、互いに名残惜しみつつ次回会うことを楽しみにして別れた。


 事務所を出ると、紗綾は善三に申し訳なさそうに話しかけた。


「なんか、善三さんすいません。土下座までさしてしもうて」


「ええ、ええ。でも、紗綾ちゃんの同級生が店長やったとは思いもせぇへんかったな」


「そうですよね。今でも信じられません。こんなことがあるなんて、なんか世の中、狭いというかなんというか…」


 ここで善三が、さっきの事務所での会話で気になったことを投げかけた。


「なあ、紗綾ちゃん、紗綾ちゃんって去年まで橋爪リサーチで働いとったん?」


「はい、働いてましたよ」


「そっか、いやな、ちょっと気になったことがあって。まあ、とりあえず車に乗ってから話そうか」


 スーパーから出た二人は脇見も振らず、矢継ぎ早にタクシーに乗り込んだ。


「おつかれさん、どうやった?」


 そそくさと乗り込んできた2人に高槻が訊ねる。と、その問いに答えるかのように紗綾が満面の笑み見せ、善三がうんうんと頷いて見せた。高槻とアンナは、言葉で答えを聞かずとも万事上手くいったことを理解した。


「あら~良かったわね。すべて順調ね。今日は大安吉日だったのかしらね」


 アンナがいつの間にか戻って来ていた涼平に振り向き、にぱっと満面の笑顔をみせた。なにかの合図を送っているようだ。紗綾はそんな2人のやりとりを見て、なんのことだかさっぱりわからなかった。だが、早々と涼平が戻っていることに申し訳なさを感じていた。


「えっ涼平君、やっぱ無理だった? 変な人達が多すぎたんやね。ん? それとも鍵が無かったから入れなかった?」


 涼平を気遣った紗綾は、一度にいくつもの問いを投げかけた。


 それを聞いた涼平はうっすらとした笑みを浮かべると、しれっとズボンのポケットからチャックつきのビニール袋を取り出した。

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