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「そうかあ~、嫌な思いをしたんやな。けど紗綾ちゃん、万引きは現行犯やから、もう今となっては罪に問われへんのんとちゃうか?」
何事にも社会経験豊富な善三が紗綾を安心させようとする。
「いや、それが元彼氏が言うには防犯カメラに映ってたって……」
「ふーん、なんかそれも眉唾もんやけど……よっしゃわかった、ワシが紗綾ちゃんの父親がわりになったるから、一緒に謝りに行こう。そんで許してもらえたら晴れて無罪放免や。まあこういうことは、ワシに任しとき!」
善三がそう言うと胸をトンと叩いた。
「いいんですか?」
「かまへんかまへん、涼平が戻ってくるまでまだ時間あるし、さっさと終わらそう」
「うん、それがいいわね。紗綾ちゃん、お父さんに任してたら上手くいくわ」
「おいおい、アンナちゃん、《《とうさん》》は止めてくれ《《とうさん》》は!」
「ん? なんで父さんがダメなのかしら?」
そこへ高槻がニタニタ微笑みながら善三の代わりに答えた。
「だからアンナちゃん、善三さんは会社を一回潰してるからあんまし、倒産、倒産っ言わんといたってや」
「ああ~、そういうことね。でももうだいぶ前の話でしょ。いつまでも過去を引っ張ってたら、女にモテないわよ!」
「ほっとけ! じゃあ、慎太郎、アンナちゃん、後はよろしくな」
「うん、頑張ってね、《《おとうさん》》」
アンナのその言葉を聞いた紗綾は、あわてて口元に手をあてた。笑い声が漏れてしまわないように気をつかったようだ。
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