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 アンナと涼平が気転を利かしてくれたおかげで、紗綾と善三は難なくタクシーに乗ることができた。まもなくして、アンナと涼平もいそいそと乗り込んだきた。


「どうだった、私のアドリブ? 上手くいったでしょ?」


「はい、ありがとうございます。アンナさん、すごく助かりました」


 紗綾が礼を言うと善三も感心したようにアンナと涼平を褒める。


「あのときアンナちゃんを踏みつけたんは良かったな。奴等、アンナちゃんを見入ってたしな。なかなかアンナちゃんも涼平もやるもんやな」


「でもあれは、ちょっとやり過ぎでしょーに。それにおっちゃんおばちゃんは、聞き捨てならなかったわよ」


「まあまあ、そのおかげで奴等の目を引けたんやて。アンナちゃん、涼平のこと許したってや」


「う~ん、そうね、善三さんが言うなら仕方ないわね。でも涼ちゃん、次言ったら許さないわよ!」


「はいはい、りょ~うかい」


 涼平が面倒臭そうに口を動かした。続いて、高槻がしゃべりだす。


「なんにしろみんなが無事に戻って来てなによりや。さあ、じゃあ紗綾ちゃん、お次は携帯ショップかい?」


「はい、お願いします。三条通りのロコモショップで予約してますんで……そこなら誰にも知られてないですし、駐車場もありますんで」


「はいよ、じゃあ、紗綾ちゃんナビよろしくな」


 このとき紗綾は、ひとつひとつ片付けていけることに嬉しさを感じていた。昨日まではどうしていいものかと思い悩んでいた。それが、こんなにもスムーズに事が運ぶなんて考えもしなかった。これもひとえに、およねのおかけだ。もちろん、善三やアンナ、涼平、高槻達のありがたさも忘れてはいない。


 あとは当たりくじを家から持ち出し、それをみずお銀行に持っていけば50億を換金する手続きが完了する。もう、すぐそこまで夢が見えてきた。


 ついさっきまでの紗綾の心は、今にも落っこちそうな曇天(どんてん)の空だった。でも今は、そんな雲の隙間から徐々に青空が広がっている。紗綾の表情は次第に明るくなっていく。

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