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そんな折、アンナが早足で善三達を追い越した。
おそらくアンナは気を利かし奴等の目を引こうとしているようだ。涼平もそんなアンナの後を追いかけていく。いつでも援護できるように紗綾と善三のすぐ前を歩いた。
身長約190センチ。年齢不詳、ひときわ体格も良く目立つアンナ。服を着せたら余計に際立つ。本日のアンナの服装は前にフリルがついたショッキングピンクのブラウスにゼブラ模様のサムエルパンツ(ヨガパンツ)。
鼻唄を歌いながら、きどった歩き方で橋を渡るアンナ。欄干にもたれかかっている男たちはそんなアンナに目を向けた。どこか馬鹿にするような蔑んだ目でアンナを追っている。その次の瞬間、アンナはこの上なく盛大に転んで見せた。
「あっいたっ! いや~ん。いった~い、もぅ、や~だ~」
にやにやと笑みを浮かべる男達。その隙に善三と紗綾は橋を渡っていく。
なかなか起き上がらないアンナ。このとき、はっと良い考えが浮かんだ涼平は、もっと彼らの目を引き付けようと、倒れた状態のアンナを踏みつけて歩いた。
「ちょっと、あんた! レディに失礼ね、何するのよ!」
「あっ、ごめんなさい。丸太ん棒だと思ってしまって」
「こんな派手な丸太ん棒がどこにあるのよ! 見たらわかるでしょ、見たら!!」
「なんや、おっちゃんおばさんちゃん、自分で派手やって自覚しとるんやな」
「キィー! 誰がおっちゃんおばちゃんじゃい!! このクソガキがっ!」
急に男口調で怒りだすアンナ。
そのとたん、一斉に笑い声が湧きあがった。指をさして笑うもの、腹を抱えて笑うもの、笑いの少ない彼らには格好の娯楽だったようだ。ショートコントのようなものを見せられた彼らは、しばし自分達の役目を忘れアンナと涼平のやりとりを、とことん見入ってしまう。
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