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約半時間後、およねの口利きもあり、すんなりと免許証の再発行を終えることができた。紗綾は、善三と共にそそくさと高槻が運転するタクシーに戻ろうとする。
帰り際、善三が首の骨をポキポキと鳴らす。この首をまわす仕草は、無事免許証の再発行ができた合図。
それを遠目で見ていたアンナと涼平は、ホッと肩を落とした。二人も何事もなかったようにタクシーに戻ろうとする。
ところがそのときだった。藤木のスマホが無音で振動する。電話に出たとたん藤木の眉間の皺が、より深く刻み込まれた。
裏口に配置していた手下の者が消えたと報告を受けたからだ。
すぐさま、数名の部下を連れ裏口に急行する藤木。それを見た善三は急遽、帰り道を変更し正面玄関から出ようとする。アンナと涼平も阿吽の呼吸のように顔を見合わせ事情を理解した様子。距離をとり善三達の後へ続いた。
「紗綾ちゃん、なんも心配あらへんし堂々としてたらええからな。変にびくびくしてたら逆に怪しまれるしな」
そっと囁いた善三は安心さすように紗綾の肩をポンポンと叩いた。
「は、はい、そうします」
「よし、橋のとこにややこしそうな奴等が見えてきたわ。目を合わさんと真っ直ぐ前を向いて歩くんやで」
前方の橋の欄干には、涼平の報告通り複数の男達が通りを歩く人達を品定めるかのようにジロジロと凝視している。
そんな視線を浴びながら善三と紗綾は、なに喰わぬ顔をして足を運んでいく。
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