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裏口には、なぜかややこしそうな人物は見当たらなかった。それもそのはず、涼平が目にも止まらぬ速さで当て身をくらわし、どこかへ片付けたからだ。
そこへたどり着いたアンナは誰もいないことに拍子抜けした。楽しませてくれると胸を踊らせていたのに。
「あら~誰もいないじゃないの。涼ちゃんの仕業かしら?」
次いでアンナは後ろを振り返った。すると、善三におんぶされている紗綾の姿が目に入り気をもんでしまう。もしや、急に彼女の体調が悪くなったんじゃないかと駆けつけようしたとき、善三が心配ないと手を横に振り、来ないように呼び掛けた。
「オッケー、心配ないみたいね。でも紗綾ちゃんどうしたのかしら?」
小声で独りごとを言うアンナは先に建物の中へと入っていく。少し間をおいて紗綾を背負った善三も建物に入った。
「善三さん、もう大丈夫です。ここからは歩いていきます」
「わかった」と言って紗綾を降ろす善三。しかしどこからか何者かに見られているような気がした。
嫌な視線を感じた善三は建物の中を見まわすと、少し離れた場所に見覚えのある顔が。また、その男の視線もとらえた。しばらく目が合う二人。
「あいつ、どっかで見たような…」
どうも顔見知りの人物がいてたようだ。あちらも善三を見るなり眉間に皺を寄せてボソッとつぶやいた。
「……確か、どこかで会ったような」
今このとき、驚いたことに善三の視線の先には闇の業者のボスである藤木が立っていた。当たりくじの探索を部下だけに任せておけなかった藤木は、この場所に紗綾が現れないかと張り込んでいたのだ。
ところが藤木は変装した紗綾には気づかず、昔どこかで知り合ったであろう善三と遭遇することになる。記憶をたどるがなかなか思い出せない。それは善三にもいえること。互いに違和感はあった。が、今はそれどころではないと思った双方は知らぬふりを決め込んだ。
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