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「なんで? なんでいっつもいっつも誰かが私の邪魔ばかりするの。私がなんか悪いことでもした? なんでよ! なんでいつもいつも上手くいかないのよ……シック、シク」
自然と涙がこぼれ落ちた。
泣き言を言いたくなるのも、わからなくもない。しばらく悲痛な運命に嘆き悲しむと、紗綾は気を取り直し涙をぬぐった。
(ダメダメ、いつまでも、泣いてられない。私は50億の宝くじに当選したのよ……あと少し我慢すればセレブ生活が待っているんだから──でも、こんなことをするのは、絶対に恵介しかいないわ。これはちょっとやり過ぎでしょーに。あいつ…メッチャムカつく! 警察に通報してやる!)
だが紗綾には通信機器がなかった。こんなにもスマホがないと不便だとは……。どんなことにも言えることかもしれないが、無くなってから、物や人のありがたさに気づくもの。
(ここで、ああだここだ言っていてもしょうがない。もう一度さっきの派出所に行って被害届けをださなくちゃ…)
そう思った紗綾は、再び派出所に歩を進めた。
「あのー、すいません」
派出所に到着するなり紗綾は、カウンター越しから奥の部屋に向かって声をかけた。と、先程、被害届を書くのを手伝ってくれた中年男性の真面目そうな警官が出てきた。
「はい──あっ、さっきのお嬢さん…どうかしましたか?」
「あのー、家にも泥棒が入ったみたいで、どうしたらいいのかわからなくて……」
その後、数名の鑑識の方と刑事さんが家に押し寄せてきた。彼らは手際よく指紋や足跡などを採取していく。もちろん紗綾も指紋採取に協力をする。
「すいませんね。どうしてもここに住んでいる方の指紋がわからないと泥棒との指紋の区別がつかないもので。──すべて終われば、善良な市民の方ですから、私が責任をもって指紋を消去しますので、安心してください」
手際よく、すべての指の指紋や掌紋(手のひらの紋)を採取された。それが終わると紗綾は刑事さんに、包み隠さず今までの経緯を話しだす。
「なるほど、さっき署に確認したら昨日の深夜に揉め事があったようですね。で、その元彼の住まいはこの住所で間違いないですか?」
「はい。私の知っている限りではそこだと思います」
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