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「いざ、しゅっぱぁーつ!」


 元気一杯のアンナの掛け声で高槻がゆっくりとアクセルを踏む。アンナの同級生である総支配人と善三の娘の香織は遅番だっため、すでに帰宅していたようだ。


「よっしゃー! 気合い入れていこかっ!」


 涼平が朝から見まわりをしたとはいえ、未だにあいりん地区やなんば駅周辺には、ややこしそうな奴等がうろうろしいる。それに加え、これは先読みできるおよねの忠告だが、運転免許センターや紗綾が住所をおく区役所、紗綾のマンション周辺には、そやつらの仲間が張り込んでいるらしい。なんとしてでも、恵介とタクは反社会勢力と結託し紗綾を捕らえ当たりくじの在りかを聞き出したいようだ。


 一方、藤木率いる闇の業者達は、一刻も早く当たりくじを回収し依頼主である尾崎に面目を保ちたかった。尾崎は、元々総務省の事務次官だったが定年を迎え、現在は宝くじの当選番号を抽出する機械製作メーカに天下っていた。


 尾崎は、総務省時代から付き合いのあったこの会社の社長である菅沼(すがぬま)と数年前から悪巧みを(くわだ)てていた。日本宝くじ史上最高額である50億円のラト10の当たりくじを自分達のものにしようと当選番号の抽出機械を不正に操作する。そうして迎えた抽選日、何かの手違いで抽出操作が失敗に終わる。


 だが、尾崎は諦めが非常に悪かった。


 当たりをだした本人が現れなければ、次回、キャリーオーバーとなり当選額が一気に85億円に跳ね上がる。そのことに目をつけた尾崎は、今回大当たりした紗綾の当りくじを無きものにしようと闇の業者のトップである藤木に一切を依頼する。


 そして現在、依頼された藤木は紗綾のマンションや実家、各役所などに自分も出張り手下の者と一緒に張り込んでいた。

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