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「あぁ、さっき帰ってたきたにゃん」


「プッ、にゃんって!」


 思わず吹き出してしまった紗綾は微笑みながながら涼平に顔を向けた。


「あっ、いや、ちょっと噛んでしもうたんや」


「そうなのね。そうだ、涼平君、朝御飯はもう食べてきたの?」


「あぁ、さっき食べてきた。それより、下には不審な奴らはいなかったぞ。で、紗綾、いつ出発するんや?」


(えっ!? 呼び捨て? なんかこの子、昨日から馴れ馴れしいな……)


 そう思った紗綾だが、そのまま受け流し問いに答えた。


「うん、先に伏見にある羽束師(はずかし)の運転免許センターに行こうと思って…住所をおいてある管轄の警察署だったら2週間ぐらいかかるらしくて……確か、そこなら免許証の再発行の受付は8時半からだっから、もうそろそろ出た方がいいかな」


「なんか、《《はずかし》》って、可笑しな地名ね」


 早々に食事を終えたアンナ。コーヒーカップを片手に小指を立てて、きどった風につぶやいた。


「そうなんです。京都は面白い地名が多くて。物を集める女って書いて物集女(もずめ)って地名もありますし」


「そうなんだ~なんか、おもしろいわね~。──じゃあもう、ゴリのおじさんの慎ちゃんに電話しないとね」


 ぱっと仕事モードに切り替えたアンナはコーヒーカップをテーブルに置くとスマホを取りに行った。


 慎ちゃんとは慎太郎、およねがゴリ男と呼ぶタクシー運転手の高槻のことだ。

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