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「あっ、(りょう)ちゃんならもうすぐ帰ってくるんじゃないかしら。朝御飯、外ですましてくるって言ってたし。でもあの子、ほんとに変わってるわよね~。団体行動とかが苦手なのかしらね。いつもポツンと一人でいることが多いから。それに家族のこととかもあまり教えてくれないのよね~」


「せやな。あんまり、みんなとつるんでるん見たことないな。どこで寝泊まりしてるんかもわかれへんし。んで、しょっちゅう煮干しばっかり(かじ)っとるイメージあるわ。まあ、せやけどなんや、およねさんだけには、なついとるみたいやけどな」


「そうなんですね……」


「紗綾ちゃん涼平のことは気にせんでええわ。そのうち帰ってくるさかい。──せやけど、ここの飯、ほんま上手いな~」


 十二分に味わいながら食事をとる善三はどこか晴れ晴れとした気持ちだった。さあ、これからはなんとしてでも、やってやる。娘に頼らずとも恥をさらしてでも頑張って周りを見返してやると。一念発起して自力で踏ん張ろうと心に誓うものがあった。


 とはいえ、先立つものも無ければ住まいもない、連絡先もない。頑張るにしてもどう頑張ってよいものかと昨晩から思いあぐねていた。そんな心持ちの善三が、ふと思いついたことがあった。そうだ、とりあえず目の前の億万長者になるお嬢さんの力になれないかと。そう思った善三は紗綾にアプローチをかける。

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