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 なにもかも、見透かされているようだった。果たしてこれからどうなるんだろう。本当に彼らに宝くじのことを知られても大丈夫なのだろうか。どうして、およねさんはホテルを買うことをすすめてきたんだろう。隠した当たりくじはちゃんとあるのだろうか……それにあいつらに見つかったら、どうなることやら。さらにさらに無事、当たりくじを換金できたとしても惠介に書かされた確約書がものを言うかもしれない。万引きのことも、不正をしてたことも……


 たくさんの問題を抱えている紗綾だったが、一刻も早く当たりくじを取りに帰り、換金したかった。先にそうしないと何も手につかなければ、他のことも冷静には考えられない。それが本音だった。


 もう夜も深まったころ、紗綾の疲労はピークに達していた。色々あった長い1日だった。それに、ちゃんとした食事を久しぶりにとれた。お腹も心も満たされた紗綾は、いつの間にか深い眠りについてしまった。


◇ ◇ ◇ ◇


 翌朝、豪華なキングサイズのベッドで目を覚ました紗綾。はっと、なにかを思いついたように布団をめくりあげ勢いよく起き上がった。およねが配役したキャスト達をつれ京都へ帰ることを思いだしたのだ。


 目をパッチリと見開いて駄々っ広い部屋の中を眺めると、そこには誰もいなかった。すべての部屋を歩きまわる紗綾。と、洗面所でアンナをみつけた。けれども、およねと涼平の姿がどこにも見あたらない。


「おはようございます、アンナさん。あれ? およねさんと涼平君は?」


 とっくに起きていたアンナは、斬新(ざんしん)なデザインの大きな鏡の前で髪をといていた。


「おはよー、よく寝てたわね。おかあさんなら夜中に帰ったわよ。なんでも、こうゆうところは落ち着かないんだって。で、涼ちゃんは、警備も兼ねてホテルのまわりを散歩してくるって」


「そうなんですね。じゃあ、私もここで顔を洗ってもいいですか?」


「どうぞ。──あっそうだ! 紗綾ちゃん、朝ごはん、ルームサービスとっといたわよ。後で、善三さんもこっちに来るって」


「は~い。アンナさん、あと、今日はよろしくおねがいしますね」


「あら~やぁだ~、ぜんぜん問題ないわよ~。億万長者さんの頼みだもの~♪」


 アンナがそう言うと、ハエ取り草のような(まぶた)をパチッと閉じた。が、その派手なウィンクは、どこか意味ありげだった。それを間近で見た紗綾は少したじろいでしまう。アンナの欲どおしそうな表情が、胸の内にある不安をさらに掻き立てたのだ。

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