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「ちょ、ちょっと、香織、香織ちゃん、少し落ちつこうか。なっ、この通りや、お父さんがほんまに悪かったから」


「ざねんなよっ! 謝って済む問題やねえっつぅーゆんや。それにこんなしょぼい格好して来やがって。恥ずかしいわっ!」


 今日も作業服姿の善三。高級ホテルではかなりみすぼらしく映ったようだ。


「悪かった、そんなつもりやなかったんや。でもな、お父さんは一時(ひととき)もおまえのことを忘れてたことはなかったんやで。それだけは信じてくれ」


 善三がそう言うと腹巻きの中から銀行の通帳を取り出し香織に差し出した。


「ほら、これを見てくれ。おまえが嫁入りするときのために蓄えてきた金や。ちょっとだけ、つこーてしもうたけど…」


 最後は聞こえにくいほど小さな声だった。おもむろに通帳の中身に目を通した香織。金額を見るなり、さらに目尻を吊り上げた。


「おまえ、ふざけてんのんかっ! なんで300万から最終残高2万5千円になっとんねん!! で、去年の今頃、なんで200万も引き出しとんのんや!?」


「ちょっとそれには色々とアクシデントがあったんや」


「はあ~? どういことやねん? おまえ、おちょくってんのんかっ!」


「いや、実はな、知り合いがこのレースなら確実に勝てるっていうたもんやから、単勝やったんやけど倍にしてやろうと思って200万をそっくり賭けてしもーたんや。。結果はご覧の通り。──すまんっ、ほんまにお父さんが悪かった」


「ふんっ、じゃあこれは? なんで今年に入ってから細かい金額ばっかり引き出しとんねん?」


 香織が通帳をじっくりと見ながら問いかけた。


「あぁ~それな、ちょっとお父さん生活苦で…」


 それを聞くなり、ふたたび香織のこめかみからピキピキと青筋が浮き出した。

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