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善三は、雷に打たれたようにその場でかたまった。動くことがでにないほど衝撃を受けたのだ。そして、深い驚きを出すように、ため息を吐き、およねの横に腰を落とした。
「善三、やっぱりおまえの娘やったんやな」
心の内を隠すように両手を顔で覆い隠した善三は、ゆっくりと頷いた。このとき、コンシェルジュである芹澤香織も心当たりがあったのか、下を向きどこか落ち着かない様子。
「香織ちゃん、このおっさんが、あんたのほんまの父親や。母親から聞いてるどうか知らんが、このおっさんも色々と苦労しとるんや。よーさん言いたいこともあるやろうけど、もし許してやれるもんならな、なっ?」
およねは香織の顔色を伺った。だが、香織は立ちすくんだままずっと下を向いている。
「もうええんや、およねさん。わしが全部悪かったんや。この子には、何ひとつ父親らしいことなんかしてやれへんかった。──香織、ほんまにすまんかった……」
善三が深々と頭を下げた。しばらく重たい空気が流れ、上品な内装を施した部屋が沈黙に包まれた。
そんな最中、香織が気を取り直したようにあっさりとした口調でしゃべりだす。
「もう今はなんとも思ってません。子供頃は辛かったこともありましたけど、ほんとに今は仕事も上手くいってますし、私は大丈夫です」
「香織、ほんまにすまんかったな……」
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