予期せぬ再会
「あのぉ兼光様、では、私もこれで失礼いたします。あと何かあれば、いつでもお呼びくだされば…」
これ以上ここにいては良くないと思ったコンシェルジュの芹澤が挨拶をしている最中、およねがその言葉を遮った。
「だから香織ちゃん、あんたはもう少しここにいてなさい」
意味がわからないとばかりに芹澤は小首を傾げた。
キングエグゼクティブスウィートのダイニングルームには、およねと善三、芹澤の3人だけが残っている。そして、アンナ達3人が隣の部屋へ移ったのを見届けると、およねが本題に入った。
「もう、わしはオブラードで言葉を包むような面倒臭いことはせんから、単刀直入に言うぞ」
「なんやおよねさん、急にあらたまって」
なにがなんだかわかっていない善三は、およねの顔に目をやった。およねは、神妙な面持ちで皺だらけの梅干しのような口を開いた。
「前、ここに来たときに気づいたんや。香織ちゃんと善三が同じ血筋やっていうことをな。どうや、2人とも心当たりはあらへんか?」
突拍子もないことを、およねが言った。いきなりのことでとまどう2人。善三と芹澤はえっと目を丸くする。だが、善三が芹澤に幼少の頃の面影を微かに感じとっていたのであろう。芹澤に顔を近づけまじまじと見つめた。
「すいません、芹澤さんって名前はご結婚されてから変わられたのですか?」
「……いえ、結婚はしてません。ただ家の事情で子供の頃、名字が変わりました」
「それじゃぁ、旧姓は? あっ、もし差し障りがなければで結構です」
「大丈夫です。旧姓は八雲と言います」
「まじでか!!」
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