6.
「どこに行けばいいのかな?」
おのぼりさんのようにキョロキョロとホテルのロビーや天井などを見渡しながら、紗綾がつぶやいた。
「そうね。おかあさんには最上階の客室としか聞いてなかったわ。ちょっと待ってね、今、電話してみるから」
と、その時だった。前からホテルの従業員らしき女性が近づいてきた。清楚な制服を着ており胸にはconcierge芹沢という名札がついている。
「こんばんは、いらっしゃいませ。紗綾様ですね?」
年の頃は30代前後の目鼻立ちが整った小綺麗な女性が紗綾達を出迎えた。
「あっはい、そうですけど」
突然のことで、少したじろく紗綾はその女性をじっと見入った。
「本日は、兼光様より御案内をするよう申し付けられております芹澤です。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「は、はい、こちらこそよろしくお願いします」
コンシェルジュである芹澤は、姿勢を正しお腹の下あたりに軽く手を重ね合わせ、アンナ達にも会釈をすると、「では、どうぞこちらです」と言ってエレベーターの方へと歩を進めた。
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