3.
ガラガラと玄関の引き戸を静かに開けたアンナ。家の前には黒塗りの高級セダンが停まっていた。後部席のドアの前では、直立不動で立っている白い手袋をした男が見て取れる。迎えの車だとすぐに察しがつく。
アンナは高級車に驚くも、他に怪しい奴がいないか念入りに首を左右に動かした。
「大丈夫や、もう安全は確認したから」
突如、聞き覚えのある声がした。アンナはその声がする暗闇へ目を向けると、夜中なのにサングラスをかけた涼平が姿を現した。
「あらぁ、涼ちゃん、早いわね。おかあさんから連絡あったの?」
「まあな。で、あの車で行くんか?」
「そうみたいよ」
そう言いながら、アンナはまたキョロキョロと辺りを見回している。安全確認を終えた自分の言葉を信じていないのかと、少し不満気に涼平がつぶやいた。
「だから、確認したって」
「違うのよ、善三さんがまだ来てないから…確か、おかあさんが連絡しとくって言ってたんだけど……」
「あぁ、善三さんならもうとっくに車に乗ってんで」
すでに、善三は助手席に腰をおろしていた。
「なんだぁ。そうなのね。じゃあ、私達も行きましょ」
アンナは後ろを振り返り、もう大丈夫という意味を込め、紗綾に手招きをする。
涼平は、いっぱしのSPのように紗綾を見守りながら、もう一度辺りを見渡した。迎えにきた運転手は、アンナ達を見るなり笑顔を差し向けドアを開けた。次いで、涼平は彼女達が無事に車の中へ入るのを確認すると、そそくさと乗り込んだ。
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