2.
急いで支度に取りかかるアンナは、次に変装させる道具を持ってきていた。
今度は手間がかかる特殊メイクではなく、簡単に済ませようとする。
紗綾の胸の膨らみに晒をきつく巻いてから、短髪のカツラを被せ、顔には男の顔つきになるメイクを施していく。服装も肩パッドが入ったジャケットとシャツ、黒革パンツを用意していた。最後はサングラスをかけて出来上がり。見事な手際で、あらよあらよという間に男装女子のできあがりだ。まあ、男装女子といっても誰が見ても若年な男と見間違えるだろう。
そんな矢先、再びアンナのスマホからジャズが流れ出した。
「よし、ちょうど30分ね。紗綾ちゃん、お迎えが来たわよ」
生まれてこのかた、男装などはしたことがない。でもなぜか、鏡に映し出された自分を見ると、惚れてしまいそうになる。ナルシストかもしれないと、今まで気づかなかった自己愛の強さを紗綾は垣間見ることができたようだ。
「はい、それじゃあ行くわよ」
「ええっ? アンナさんも一緒に行ってくれるんですか?」
「そうよ。おかあさんが、私と善三さんと涼ちゃんをボディガードにって、言ってたきたのよ」
「でも、涼平君は……」
「大丈夫よ。彼はまたすぐにどっからともなく現れるから。そういう奴なのよ、あいつは。知らんけど…」
すると、大きな三毛猫のりょうへいが「にゃあ~~」と鳴き声をあげると外に出ていった。
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