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 その場で電話にでたアンナ。次第に声のトーンが下がりだし歯切れの悪い口調に変わりだす。何やら良からぬことが起こっているようだと、誰もが感づき固唾(かたず)を呑んだ。


「は、はい、わかりました…では……」


 そう言ってスマホの画面をタップし、電話を切った。明らかに落ち込む顔を浮かべたアンナ。そんなアンナに多栄子が気づかうように声をかけた。


「アンナちゃん、どうしたの? 急にお通夜に行った人みたいな顔になって」


「いえ、なんでもないの」


「そう……でも、なにか悩み事でもあるなら、みんなの知恵を借りて解決できることもあるかもよ。だからアンナちゃん、遠慮なしになんでも言って」


「ありがとう、多栄子さん。ほんとうになんでもないのよ」


 このときアンナは紗綾にも気をつかっていた。本当のことを喋ると紗綾が責任を感じてしまうと思ったのだ。電話の相手は、アパートの家主からだった。


 アパートで揉め事を起こした住人は、即刻退去しなければならない決まりだった。今日の正午、アパート内で乱闘騒ぎがあったのはいうまでもない。その上、アパート内の壁や扉が破壊されたのだから、まったくもって言い逃れができない状況だった。


 そのことを、アパートの住人が大家に通報したようだ。その住人とは、よれよれのトレーナーを着ていた高齢男性だった。そう、紗綾のことを通報した老人でもあった。この老人、謝礼金を受け取れなかった腹いせに大家へ告げ口をしたようだ。誰よりも目立つアンナは、真っ先に血祭りにあげられたのだ。がしかし、事情はどうであれルールはルール。アンナは大家の退去勧告に従わざる得なかった。

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