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何事も見通せる、およねの力には感服させられる。
不思議なことに、およと出会ってからというもの、とても穏やかな気持ちになっていた。なぜかと聞かれても答えられないが、惠介との恐怖に満ちた関係を未だ断ち切れない紗綾は、極度の緊張から解放され、ひとときの安らぎを感じれるようになっていた。
こんなにも深い愛情をもったおよねさんって、一体何者なんだろう。そんな疑問が頭の中を埋め尽くす。そんな紗綾の心の内を知ってか知らずか、アンナが声をかけてきた。
「さあ、紗綾ちゃん、いっぱい聞きたいことがあると思うけど、今は先にお風呂に入らしてもらって、お顔を洗ってきなさい」
多栄子も「それがいいわ」と言って、バスタオルやらの用意をしに行った。
一際大きな三毛猫は紗綾に寄り添ったままだったが、人間の言葉を理解したのか再び座布団の上にのり毛繕いをし始めた。
少しの間をおくと、多栄子が居間に戻ってくるなり紗綾に話しかけた。
「お風呂の準備ができたわよ。──私も紗綾ちゃんって呼んでもいいかしら?」
「はい」
「じゃあ紗綾ちゃん、こっちに来て。ちゃんと、着替えも用意してあるから」
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