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「もう降参かい?」
高槻がニコニコしながら紗綾に尋ねた。
「はい。もう降参しま~す。ぜんぜんわかれへんかった…ハッハハ」
「正解は、ただの野良猫ちゃんでした」
それを聞き、嫁の多栄子が口を挟む。
「あなた、それは違うわよ。りょうちゃんは、れっきとした日本猫よ。そんなこと言ったらりょうちゃんが可哀想でしょ」
「あぁ、そうやった、そうやった。こんなありがたい猫を野良猫呼ばわりしたらバチがあたるってもんや。すまんかった、すまんかった、りょうへい」
嫁に指摘された高槻は、バツが悪そうに後頭部に手を当てた。
「えっ!? りょうへいって、さっき助けてもらった男の子の名前と一緒じゃ…」
ふと、紗綾がつぶやくと、以前に同じ疑問をもっていた多栄子が言い添える。
「そうなのよね。およねさんが突然、この猫をここに連れてきて、りょうへいって名付けたのよ。ややこしいでしょ? だから私は、りょうちゃんって呼んでるの」
「そうだったんですね」
「でもな、不思議なことにこの猫が来てから、客が嘘のように増えてな…」
そう、不思議そうに話す高槻。そのあとも多栄子が言葉を付け足していく。
「そうそう。りょうちゃんが来てからというもの、なにもかも上手いこと回りだして。──実はね、およねさんから、この猫は招き猫やから大事に面倒みてやれって言われてたのよ。それに、義理堅い猫やから一生懸命、世話をするほど飼い主に恩義を感じるって、その時は「はあ~そうですか~」って感じだったんだけど、今は驚きっぱなしよ」
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