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紗綾達が家に入ると、大きな三毛猫が座布団の上で優雅にくつろいでいた。猫は、前足に唾液をつけると、ゆっくりとした動作で何度も顔全体を拭っている。
紗綾の存在に気づくと、喉をゴロゴロ鳴らし紗綾の足に顔をこすりつけてきた。そうして、尻尾をぴんと立てて身体をすりよせたりもする。この猫の行動は心を許した相手への挨拶のようなもの。
「うわぁー、ネコちゃん、めっちゃ可愛い~」
語尾に桃色のハートが幾つもついてそうな音色。動物好きな紗綾は、その三毛猫を即座に抱き上げた。猫もまんざらでもなさそうに、ゴロゴロと喉を鳴らし続けている。
だが、やはりこの一連の紗綾の行動に高槻夫妻は不信感を抱いた。というのも、さっきまで腰を曲げて杖をついていた老婆が、軽快な動きで猫を抱き上げ、可愛い声をだしたのだから正直、まったく理解できなかった。
眉をひそめた夫婦を見て、ようやくアンナが説明をしだす。
「あのね、この娘は、元々は若い女性なの。さっきね、私の魔法で老婆に変身させたのよ」
それを聞き、益々、わからないといった表情の二人。だが、アンナは百聞は一見に如かずと言わんばかりに、淡々と紗綾に施した特殊メイクを取ろうとする。それがここへ来た本来の目的だったのだ。
「ちょっと、紗綾ちゃん、猫をかまうのは後にして。それより、さっさっとメイクを落とすわよ」
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