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「なんや、ややこしいやっちゃな、アンナちゃんは。人がせっかく言ってやってるのによ。ヘンッ!」


「ややこしくて悪かったわね。別にゴリのおじさんの手を借りなくてもやっていけるわよ。ホッホホホ」


「もぉっ、ったく、お客さんをほっぽらかして! ごめんなさいね。さあ、あがって、あがって」


 玄関口で2人の会話を聞いていた高槻の嫁があきれた様子で呟いてから、紗綾に声をかけてきた。


「あっ、はい、すいません、おじゃましまーす」


 しかしなぜか、年寄りなのに少し高めの玄関(かまち)をひょいと飛び乗る梅子を見て、高槻と嫁が目を丸くした。


「梅子さんは、年に似合わず動きが機敏なんやな」


 当たり前の驚きだった。おもわず高槻の口から思っていたことが飛び出した。その疑問に、すかさず返したのはアンナだった。


「当然ですわ。あらっ!? おかあさんから聞いてなくて?」


「いえ、なにも」


 高槻夫妻は申し合わしたように、首を横に振った。


「ちょっとここではなんですから、とりあえず中へ入りましょ」


 ぞろぞろと家の中へ入っていく4人。入る途中、高槻が簡単に嫁を紹介する。


「梅子さん、これが自慢の嫁の多栄子(たえこ)ですわ。わしには勿体ないぐらいの嫁でして…」


「ちょっと、お安くないわね。ほんと、アホらしくなってきたわ」


 またもや皮肉たっぷりにアンナが口を開いた。


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