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14.

 およねと紗綾が高架下で待っていると、ほどなくして高槻が運転するタクシーが見えてきた。


──プッ、プッ、ファ~~ン──


 クラクションで着いたよと合図しながら、高槻はおよねと紗綾の前に横付けし、後部座席のドアを開けた。


「おまたせしました、お疲れ様です」


「うむ、すまんのゴリ男、使い立てて」


「いえいえ、お安いご用ですわ。それより、はよー乗ってください」


「ふむ。あのな、今日はわしゃええんや。ワシはこれから相談者のところへ行ってくるから、梅子だけを頼む。梅子に多栄子さんの手料理でも食わしてやってくれ。それと、しばらくの間、泊めてやってくれんかの?」


「わかりやした。じゃあ、梅子さん、とりあえず乗って。それで、およねさん、迎えはどうします?」


「帰りはわしは、送ってもらうから心配ない。それと、これをいつものところへ……」


「そうですか、わかりやした。では……」


 およねは助手席の窓越しに、なにやら高槻と話し込んでいた。が、その場に立ち(すく)み聞き耳を立てていた紗綾はすべてを聞き取れないでいた。そんな、ぼーっと年寄りをモチーフにした案山子(かかし)のようにつたっている紗綾に早く乗れと言わんばかりに、およねは顎をしゃくった。


 そうしてから高槻にすべて告げたおよねは、紗綾を乗せたタクシーを見送ると、またしたも高真志屋の方へと歩いて行った。


 しばらくタクシーを走らせた高槻は、ある建物の前で駐車しようとしていた。


「ん? どこかに、寄るんですか?」


 さっきの家に真っ直ぐ戻らないものだから、思わず紗綾が高槻に尋ねた。


「うん、いつもおよねさんに頼まれてるんですわ。梅子さん、ちょっとだけここで待っててくださいや」


 そう言うと、高槻はおよねから受け取った洗面器を持って建物の中へ入って行った。

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