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12.
「まあ、わしを信用するもしないもおまえの自由や」
そう言うとおよねは、よっこらせっと立ち上がり、迎えが来る場所へと歩を進めようとする。
すぐさま現実に意識を戻した紗綾はおよねにすべての疑問を投げ掛けた。
「どうしておよねさんが、そのことを!?」
「だから言うてるやろ。おまえの父親が教えてくれたって」
「だって、父はすでに亡くなって…」
「そやな、癌でやろ」
「なんでそのことを知ってるんですか?」
「だから、おまえの父親が…、ほんまにしつこい子やな」
「………」
「まあ、何度も言うが信じるも信じないもおまえ次第。──あと、もうひとつ、おまえの住んでいるマンションの風呂場に介護用の椅子があるんやってな。その椅子に大事な物を隠しているんやろ。今のところ、大丈夫やって伝えてくれって、おまえの父親がな」
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