13
冷水でシャワーを浴びたせいか、なんだか身体がポカポカと暖かい。紗綾がホッとしたとき、お腹がギュルギュルっと鳴りだした。
だが、紗綾は空腹よりも眠気に勝てなかった。
(とりあえず寝よう。疲れきったこんな状態では頭も働かないわ)
そう考えた紗綾は、絶対失ってはいけない盗まれてもならない当たりくじをチャック付きのビニールに入れ、それをパンストの中に入れた。そうして、そのパンストをお腹にくくりつけてから、ベッドに横たわった。
肌身離さず身に付けていることで安心できた。これで、ゆっくりと寝れそうだ。ひとときの安らぎを得た紗綾はベッドに沈むようにして眠りについた。
明くる日、ぱっと目が覚めた紗綾はすぐさまお腹に手を当てて、上半身を起こした。
「あった! 10桁の番号も同じ。よかった」
現金50億円の引換券。これを持っているだけで神経がすり減りそうだと感じる反面、夢が実現できる劵だと思うと胸が小躍りしてしまう。
今日は何をしよう? 残りの現金で、後13日過ごすのには無理がある。かといって、カードローンは限度額がいっぱい。あれこれのポイントも貯めていない。これといってお金を借りれそうな友人もいない。ないないづくめだ。いろいろと頭を悩ませている紗綾は、はたと目の前のノートパソコンに目をやった。
「あっ! そうだこれがあったんだ」
金目になりそうなものを見つけた。いくらになるかわからないが当面の食費ぐらいにはなりそうだ。もしかしたら滞納している電気代やガス代、携帯代も払えるかもしれない。
電気とガスが繋がれば、なんとか自炊ができる。学生時代は、安価な《《もやし》》だけで一週間やり過ごしたことがある。
(うん、バッテリーもまだ少しだけれど残ってるわ。とりあえず昨日の通話録音をパソコンがあるうちにUSBに入れておこう。恵介が訴えてきてもいいように。備えあれば憂いなしね)
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