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9.

 そんな自責の念にかられていた最中、若いカップルが面白半分にスマホのレンズを向けてきた。なにやら、動画を撮っているようだ。


 またしても、紗綾の懸念していたことが的中する。さっき紗綾が悪い方に考えていたことが現実に起こったのだ。今度は若い女の方が、百円玉を洗面器に投げ入れている姿を、彼氏であろう男が、にやにやしながら撮影している。


 紗綾はおよねの方へ顔を向けるが、およねは無表情のまま、まったく動かない。むろん、頭を下げもしなかった。さすが、およねだと紗綾は関心する。

 

 だが、バカップルは不満そうだ。小銭とはいえお金をだしたのに、お乞食の反応がない。彼らからすればゲーム感覚なのだろう。機械にお金を入れると何らかの反応があって当たり前。 

 

 そんな彼らの目的は、おもしろ動画を撮って視聴者を増やすこと。にもかかわらず、何の反応もないお乞食さん。これではつまらない動画になってしまう。どこで覚えてきたのか、「時間と金は無駄にしたくない」と言い合っているバカップル。


 なにがなんでも、視聴者が食いつく映像を撮りたそうだ。バカップルは無い知恵を絞りだす。


 寸刻、良い知恵が浮かんだのか、若い男がおよねに喋りかけた。


「ねえ、お婆さん。洗面器に千円入れたげるから、感動したような顔をして、さっきみたいに俺らにお礼を言ってもらえへん? もしあれやったら、嘘泣きしてくれてもいいし…」


 なるほどと紗綾は納得した。さっき、およねがした時代劇風のお礼を撮りたかったのだ。


 しかし相変わらず、およねぴくりとも動かない。

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