117/312
19
このとき、およねの後ろを歩いていたのは紗綾だった。ぼさぼさのおかっぱ頭の白髪。顔には幾つものシミと深い皺が刻み込まれ、杖をつき腰を曲げて歩いている。どう見ても80ばかりのお婆さんだ。というのも、アンナはテコンドーの選手を引退後、単身でアメリカに渡り2年間、ハリウッドで特殊メイクを勉強していた。そして、短時間で紗綾をこのような姿に化けさせたのだ。その上、ところどころ破れ、汚たれた乳白色の雨合羽を纏っている風貌は、誰が見ても老婆のホームレスだ。
およね達がアパートを出るのを見届けると、善三が涼平達につぶやいた。
「さあて、そろそろわしらも、おいとましようかの」
「せやな」
寛太も牛刀を新聞紙で作った鞘に仕舞い、やれやれといった表情をみせた。
だが、遠藤達はまったくもって腑に落ちない様子。配下の者達に指示をだし、アパート内のすべて部屋を探し回ろうとする。
お読みいただき、ありがとうございます。 少しでも面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。 評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。




