2
手際よく寛太が酢味噌を作り、胸元くらいの高さの冷蔵庫から鰡の刺し身を取り出すと、皆の頬が今にもこぼれ落ちそうになっている。
「さあ、召し上がれ」
寛太がニコニコ顔で大皿と酢味噌が入った皿と割り箸を、ちゃぶ台に置いた。
「それじゃ、いただこうかの」
初めにおよねが箸に手をかけると、他の人達も一斉に箸を割った。
だが、紗綾だけは得体の知れない魚の刺し身を前にして、戸惑った。
(こんな魚、食べたことがないし。ほんとうに食べても大丈夫なのかしら? もしかしてお腹を壊すんじゃないの?)
箸を持つことさえ躊躇した紗綾。そんな紗綾を見た涼平は、紗綾の目の前の小皿にひと切れの刺身を置いた。
「遠慮せずに、食べろよ」
すでに口をモグモグ動かしている涼平は、鰡を見て困惑する紗綾に半ば強引にすすめる。箸を割り、刺身をのせた小皿を無理やり紗綾の小さな掌に持たせたのだ。
「えっ!? ちょっと待って」
「何を待つんや?」
仕方ない、ここで食べなければ嫌な空気が流れてしまうかもしれない。お世話になっている人達に嫌な思いをさせたくない。覚悟を決めた紗綾は、思いきって酢味噌につけた刺身を口の中に放り込んだ。
お読みいただき、ありがとうございます。 少しでも面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。 評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。




