エイミーとジャック 1
「知っているよ。俺が急遽帰国したのは父上から君が婚約するかもしれないと報せがきたからだからね。」
「えっ!?」
「さっ、馬車に乗って。ちょっとだけ遠回りしよう。話したいこともあるし。」
「ど、どういうことなの!?ジャック?」
「さっき言った所まで頼む。」
ジャックはエイミーの言葉を笑顔で流し、御者に馬車を出すように言いつけた。
馬車が学院を出て少し経過した。
「ねえジャック、どこへ向かっているの?さっき、エヴァンス邸へ行くって…でも、この道はエヴァンス邸とは違うわよね?」
「秘密。着くまでのお楽しみ。」
「分かったわ。それと…」
「ん?どうした?」
ジャックはエイミーに笑顔を向ける。
「えっと…そ、その…ね、あの…」
エイミーはモジモジしている。
それもそのはず。ジャックはエイミーの横に座っているのだ。しかも、馬車に乗り込んでからずっと手が離れない。更にはふたりの間はあまり距離がないのだ。
ジャックはエイミーが何を言いたいのか分かっていながら、どうした?と訊いている確信犯だった。
「な、何でもないわ…。」
エイミーはジャックに何を言っても笑顔で誤魔化されると思い、諦めることにした。
馬車のスピードがゆっくりになる。
「エイミー、もう少しで着くよ。」
エイミーは外を見る。
「ここ…」
到着したのは、エイミーたちが幼い頃によくピクニックに来ていた、小高い丘だった。
「エイミー、降りよう。」
ジャックの手を取り、エイミーが馬車を降りると、彼女は景色に魅入られた。
「とても綺麗ね…。」
夕刻少し前だったこともあり、茜色の空がとても美しい光景が広がっていた。
「昔は夕刻前には屋敷へ戻っていたから、この景色を君と見ることは叶わなかったからね。
帰ってきたら、行きたかったんだ。」
「そうだったの。ジャック、連れてきてくれて、ありがとう。」
「どういたしまして。俺が君を連れてきたかっただけなんだ。」
「嬉しい…。」
「よかった…。エイミー、聞いてほしい話がある…。」
ジャックはエイミーを見つめる。
「なあに?」
エイミーの返事を待って、ジャックがその手を優しく取り跪く。
「ジャック…?」
「エイミー、俺は昔から君のことが大好きでした。叶うことならば、この先ずっと俺の傍で笑顔で共に生きていってほしい。
俺の妻になってくれないだろうか?」
「ジャック、私はガーランド様と…」
「知っている。でも、その婚約は君の意思ではないのだろう?」
「それは…そうだけど…婚約は家同士の繋がりで…」
ジャックの瞳に見つめられたエイミーは只々、困惑してしまった。




