ジャック、リミッターを外す 1
エイミーとの婚約が正式なものとなり、サーフロー伯爵の配偶者として執事長ロブロの指導の元、ジャックはサーフロー領のことを学び始めた。とは言っても実は彼、サーフロー領のことかなり知っていた。
それというのも自身が侯爵家を継いで、エイミーと結婚したとしてもホーキング侯爵家がサーフロー領を指揮下において、守っていけばいいと
考えていたからだ。そのことを父親に話し、ロブロを通してサーフロー領の現状などは留学中も把握していた。
そして、子どもに伯爵位を継がせれば彼女の不安はなくなるだろうと思っていたからだ。
「流石はジャック様にございますね。手紙だけで、これ程現状を把握できるとはいやはや、素晴らしいです。」
ロブロは笑顔を向ける。
「ありがとう、ロブロ。さて、もう少ししたらエイミーが帰ってくるかな?」
視線を窓の外へ向ける。
「左様にございますね。」
「早く帰ってこないかなー。
帰ってきたらたくさん甘やかしてから自分は屋敷に帰ろうと思うんだ。」
ジャックは泊まりはしない。それはエヴァンス侯爵に叱られる案件だ。
「本当はずっと伯爵邸で過ごしていたいんだけどね。」
「そんなことをされますと、私めからエヴァンス侯爵様へ…」
「分かっているさ。節度は持つよ。あっ、馬車が来たな。」
ジャックは足早にエイミーを出迎えに玄関へ向かった。
「エイミー、おかえり!」
ジャックは帰ってきたエイミーを抱きしめる。
「ジャック、ただいま。」
エイミーもジャックの背に腕を回す。
「エイミー様、おかえりなさいませ。」
「ただいま。ジャック、宿題が出てしまったから、晩餐前に終わらせなくちゃいけないの。もし、仕事が残ってるようなら…」
「今日の分は終わっているよ。君との時間をなくしたくないからね。」
「そうなの!?では、早めに宿題を…」
「大丈夫だよ。」
「何が大丈夫なの?」
名案がある!とばかりに大丈夫と言うジャックをエイミーは不思議に思う。
「とりあえず、勉強部屋で待ってるから着替えておいで。」
「分かったわ。」
そして着替えが終わったエイミーが勉強部屋へ入ると書物机と少し大きめな椅子が一脚しか置いていなかった。
その椅子には既にジャックが座っている。
「ジャック?どうして椅子が一つなの?」
「君の席はここだよ。」
ジャックは自分の膝の上を指した。
「えっ!?そ、それは…」
「ダメかい?たまに膝に君を乗せるだろ?それと同じだよ。」
「えっと…私、宿題を…」
「ダメか…?」
捨てられた子犬のような表情をみせられエイミーの心は揺れる。
ただ、間違いなく、集中できない…それだけは分かっている。




