魔王退治祝勝会 褒美 忍者フォルカスの望み
まだ旅立ち前、転職前の話が続きます。
パーセル国王ガイデンが次に忍者フォルカスに問う。
褒美として望むものは何か、と。
忍者フォルカスが答える。
「私の故郷キョウバテ冒険者ギルドのギルド長が今回の大戦で亡くなったとのこと。私は故郷に帰りキョウバテの冒険者ギルドのギルド長になりたいです。すでに王国統括ギルド長からは承認を得ております。キョウバテは今回の対戦の前線。荒廃もひどくなっております。私は故郷キョウバテの復興を民間の立場から、ギルド長として民の要望に答えることで貢献したいと考えております。また、今回冒険者も沢山亡くなりました。冒険者を必要とする最前線の故郷で冒険者を育てることもやりたいと思います。」
パーセル国王ガイデンが言う。
「それは駄目だ。カインやミリマムは王都に残る。フォルカスも王都に残ってくれ。前魔王サルステンやその旧臣たちは姿を消したとはいえまだ生存中だ。そなたが王都に残らなくてどうする。」
「前魔王サルステンやその旧臣たちが王国を害するつもりであったなら、前大戦時に魔王と協力して攻めてきたでしょう。それがなかったので大丈夫ではないでしょうか。また、サルステンは前魔王、すでに絶対障壁を有していないとは言えその力は強大。私は以前サルステンとやりあった事がありますが完敗でした。もしサルステンが攻めてきたら私たち4人では全く歯が立たないでしょう。新しい力が育たないと勝てません。その新しい力を育てるためにも故郷に戻りたいのです。」
「解かった。忍者フォルカスよ。そちの望むようにしてこの国の民を救ってくれ」
「解かりました。命を賭けてこの国を守ります。」
忍者フォルカスが答えた。
***前夜***
勇者カイン、賢者ミリマムと話した後、ライトは忍者フォルカスの所に行った。
「フォルカスさん。明日、何を言うつもりですか。」
忍者フォルカスは言う。
「俺は故郷に帰って、故郷のギルドマスターになろうと思っている。」
「フォルカスさんなら王都のギルドマスターにもなれるのでは。」
「わかってるだろ。ライト。俺が王都のギルドマスターになったら、今のギルドマスターはどうなる?降格だ。表面上は俺に協力する姿勢を見せても、裏では俺を失脚させようと色々邪魔をしてくる
だろう。そんなのメンドクサイじゃないか。後は・・・多分お前と同じ理由かな。」
「俺と同じって?」
「隠すことはないさ。ライト。お前と同じで、俺は今のこの国は嫌いなんだよ。」
「だから王国中央とは関わりたくないと言うことですか。だったら、いっその事例えば自給自足のできる土地を貰って引きこもるとか、冒険者ギルドを引退して・・好きな釣りや漁師になるとかもあるんじゃないですか。」
「立場上無理だよ。俺は現在この大陸の生存者の中でただ一人のS級冒険者だ。引退はできない。だから妥協するしかないんだ。故郷のギルドマスターは今空位だ。だから実績で俺がなることは可能だ。故郷であればくだらん貴族どもとは関わらなくて済むし、貴族どもの見栄のための馬鹿げたクエストも受けなくて済む。そういう依頼は王都のギルドで受けるだろうからな。ギルドマスターになると基本クエストは受けなくていい。俺にしかできないクエストの中で、平民の為になるものだけ受ければいいからな。それに、王国騎士団長だが多分カインがなるだろう。実績、実力ではライト、お前の方がふさわしいが、お前はなる気がないだろ。カインならもともと貴族だし貴族どもと関わるのはあいつに回せばいいしな。それに俺には妹がいる。この国にな。」
「そうですね。フォルカスさんがあるていどの立場にいないと、王は許可しても貴族どもが妹さんに何かしてくるかもしれませんしね。」
「ああ。それはそうとライト、お前は何を言うつもりだ。」
「明日はカムクラ王べルージュも来ます。俺はべルージュとはあいつが皇太子の時からの付き合いです。あいつがカムクラ軍、俺が傭兵ギルドの一員を率い何度も一緒に戦った仲です。カムクラはこの国の様な身分制度があまりない国だし、あいつの理想の国造りを手伝いたいというのが本音です。でも無理でしょうね。」
「それは無理だろうな。カムクラはこの国の、俺やお前レベルの戦士や冒険者はいないが、王国騎士団、冒険者ギルドそして傭兵団の質が揃っていて大陸一の戦力だ。そこにお前が加わることをバーセル王は許さないだろう。べルージュはカインより強い。べルージュに勝てる人間は俺とライトしかこの大陸にはいないだろう。お前がカムクラに行った場合、俺一人でべルージュとお前を倒さないといけないことになる。それは許さんだろう。」
「ですよね。」
「それにカムクラ王べルージュ自体は優れた国王だが、カムクラ自体は却ってこの国より状況は悪い部分があるしな。」
「え・・・何を言っているんですかフォルカスさん。」
「ライト、そうかお前傭兵だったからあまり他の国に行ったことはなかったか・・・俺は冒険者だったから色んな国、地方には行ったし見る機会はあったから、お前が知らないこともある程度は知っている。」
「そうですか。見てみたいな、ほかの国。それにフォルカスさん、カイン、ミリマムはそれそれ冒険者、勇者、賢者になりたいと思ってなったのでしょうけど、俺は孤児で傭兵ギルドに引き取られ、あれになりたいこれになりたいということを考えることなく傭兵をすることになった。本当に自分がなりたい、したいことは何かということを考えてみたいな、と魔王を倒した後考えることがあるんですよ。」
「おまえなあ。大陸に3人、この国に2人しか居ないS級傭兵だぞ、お前は。そのお前が傭兵に向いてなかったら誰が傭兵に向いているんだよ。」
「まあそうですが。でも、他の2人のS級と比べて扱い酷いですよ俺。傭兵ギルドは、孤児である俺を拾ってやったからってことで散々無茶言ってきましたしね。クエストが済んで帰ってきた途端に貴族様のご指名だからって休む間もなく他のヒマな奴でもできるクエストに駆り出されたり、クエスト受注拒否しても無理やりやらされたり、疲れて夜寝てるところを無理やりおしかけてきて拉致してクエストやらされたり、どうみても当時の俺の実力じゃあ無理なクエストを人がいないからってやらされたり、本当に低レベルの時はいつ死んでもおかしくなかったですよ。傭兵ギルドのせいで。もう24時間、一日中気を張って生死にかかわる仕事をするのは真っ平ごめんですよ。例えそれが自分に向いている仕事だとしても。」
「でもよかったよ。俺は正直今夜お前が出奔するんじゃないかと思ってたから。」
「あ、それも有りだったかも。でもその場合、フォルカスさん俺止めたでしょ。カインやミリマム、王国騎士団、ギルドからは逃げれてもフォルカスさんからは逃げる自信はないですよ。」
「俺も逃がすつもりはないさ。明日、このパーティが解散するまではな。」
「(笑)ありがとうございます。自分が今後何をするか、今フォルカスさんと話して掴んだような気がします。」
「そうか、大したことは言ってないがそれならよかった。お子さん2人は部屋に戻ったし大人二人で今から飲まないか」
「付き合います。」
***********
あの人は俺とはもっと深い理由で王国には関わりたくないということで、田舎の冒険者ギルドマスターとして中央から距離を保つとのこと。
フォルカスさんと初めてあったとき、冒険者Sレベルと聞いてたんだけど、俺も傭兵レベルSという対抗心はあって、試合を申し込んけど、強かったよな。あの人。これまでの自信が粉々に崩されたし。あの人、一撃一撃は軽いんだけど、とにかく早い。全く当たらなかった。2時間位やったんだけど、向こうの攻撃は致命傷にはならないけど当たりまくる、こっちの攻撃は当たらないで、結局引き分けだったけど、実質的にはこっちの完敗。何度も試合を申し込んで、ようやく3;7の確立で勝てるようにはなったけど。一撃あてればこっちの勝ち、当てる前に急所連撃されればこっちの負けって感じだった。
それに、冒険者の経験とスキルがあって、敵の気配、罠はずし、アイテムの鑑定は百発百中で本当に助けてもらった。ありがとうございました。
でもただ一つ心残りは、この世界では、レベルが下の人間に関してはレベルが上の人間はレベル、パラメータや所有スキルを見ることが出来るのだが、その逆は見ることが出来ない。今現在、あの人は俺よりレベルが上で、俺がパラメータを見ることが出来ない唯一の人なんだけど、素早さ関係のパラメータやスキルは見せてほしかったな、とは思う。
旅立ち前の前振りは後1話の予定です。