旅立ち 1
フォルカスさんと一緒にキョウバテへの旅に出発した。
パーティを組んでいた時は、魔王軍の襲撃を恐れ、ピリピリしたムードで旅をしていたが、今は魔王を倒し魔王軍も魔王領に逃げ帰り籠ったままなので、のんびりとした旅が送れそうだ。
のんびり話しながら急がずゆったりと旅をしている。
そういえば、偽造ギルドカードの口止めを王国ギルドマスターのダルシムさんにどうやって認めてもらったのか聞いたら、
「ダルシムの所に行って「ライトから偽造ギルドカードの事をお前が口外したら事故に見せかけて消してくれという依頼を受けた。」と言ってやった。」
と言っていた。確かにこれで大丈夫だろうけど、もうちょっと言い様があったのではないか、と思う。だから偽造カードのパラメータを書き換えに行ったとき、ダルシムさんが妙にオドオドしてたのか、と思った。
ダルシムさん自身、元A級凄腕の傭兵だったが、フォルカスさんや俺には及ばない。俺の場合ダルシムさんを痛めつけたらアシがつくだろうけど、フォルカスさんならアシがつかずに容易にダルシムさんを消すことが出来るだろう。
「ライト。俺は思うんだが、請負制の仕事につくつもりはないのか?請負だと、請け負った仕事をすれば時間がどれだけかかろうが一定の金額がもらえる。傭兵が嫌なら冒険者になったらいいじゃないか。」
「だからフォルカスさん。俺は夜中だろうが休みだろうがいつでも呼び出される仕事、死ぬ可能性のある仕事は嫌なんだって。」
「そんなことは解ってるよ。いいか、ライト。お前はライトの傭兵ギルドカードではSだ。そのお前が冒険者になったとしたら、傭兵の経験が参考にされて、多分冒険者としてはBランクスタートになるだろう。Bランクの冒険者だと、例えば退治クエストだと、精々カマイタチかヴァンパイアクラスだ。この程度ならお前なら命の危険なく簡単に倒せるだろ?だからライト名義でBランク冒険者としてギルドに登録して、B~Cランクのクエストをこなしていけばいけば、安全で簡単にゼニーを稼ぐことが出来るぞ。近隣のクエストでBランクのクエストなら、お前の生活レベルなら1週間のうち半日働いて残りは働かないといった感じで十分食っていける。」
「でも、実績重ねたら昇級試験受けなくっちゃいけないでしょ。冒険者としてAランク、そしてSランクになったら、結局はいつでも呼び出される仕事、死ぬ可能性のある仕事を受けないといけないじゃないか。」
「その場合は昇級試験を拒否すればいい。冒険者ギルドは傭兵ギルドと違って昇級試験の拒否は容易だぞ。例えばハミングさんというB級冒険者がいるんだが、ハミングさんは結婚して子供が生まれたということで、危険な仕事はしたくないと言って、ずっと昇級試験は拒否してる。ハミングさんはB級だが、その辺のA級冒険者よりよっぽど強いぞ、」
「それにライト、冒険者と傭兵の違いとして、同じ請負業でも、冒険者の方がクエスト達成までの期間が短いものがある。傭兵の場合、軍に従属する場合や、傭兵団のみで行動する場合でも、準備、行軍、クエストと簡単なクエストでもある程度時間がかかるが、冒険者の場合、選べば早く済むものも多いそ。」
フォルカスさんは続ける。
「ただ、傭兵と比べて不利な点は当然ある。傭兵団の場合、軍に従軍するにせよ独立して行動するにせよ、水や食料は依頼主や国がある程度は準備してくれるのに対し、冒険者は自分でクエストにかかる期間の食糧を準備しなくてはいけない。だから、傭兵クエストと冒険者クエストは成功報酬は同じ場合でも、手取りは傭兵の方が多い。ただし、だから傭兵よりも冒険者の方がサバイバル能力は多い。野営をする場合傭兵の場合は依頼人が支給した食料を取ることが多いだろうが、冒険者の場合は、獣を狩り野草を採取して調理することが多いから。傭兵の場合は依頼が長引き依頼者からの支給の食糧が尽きた場合に初めて狩りなどをするだろうから、食料調達スキルは傭兵より冒険者の方が上だ。」
まだ続ける。
「ライト、お前の能力があれば下手に会社務めするより独立して事業主として働いた方がいいんじゃないか。例えば解体屋なんかがお前にはおススメだと思うぞ。今、魔王が倒れ各国復興で解体の需要が多い。お前の場合、解体を依頼された建物にあらかじめ入っておいて、建物周辺をプロテクションで覆いその内部でお前が剣のスキルでも魔法でもいいからぶっ放して建物を破壊し、破壊後その廃材を四次元荷物袋に収納してプロテクションを解除し、廃材を廃棄物置き場までもっていけば、素早く近隣に迷惑をかけずに解体を行えるから、流行るとおもうけどなあ」
「最初から開業したほうがいいのかもしれないけど、やっぱり会社員も経験してみたいんだよね」
俺はフォルカさんに言った。




