祭り序章
次の日、朝早く目が覚めたルークは街に散歩に出ていた。まだ閉まった店や、人気のない公園などを歩き早朝の澄んだ空気を味わっていた。
宿に帰ると朝の支度をしていたセシルと目が合った。
「朝からどこ行ってるのよ」
「散歩かな」
「ふーん。ルークが早起きなんて珍しいのね」
こんな軽口が叩けるようになるまでかなり時間がかかった、セシルは引き取ったばかりの頃はあまり感情を表に出さず、無口などこな寂しげな印象だった。
「そうだセシル」
「なに?」
「今日は夏至のお祭りがあるだろ、一緒に行かないか?」
「宿は大丈夫なの?」
「今日はお休みにしたから大丈夫だよ。」
と、前々から作戦を練っていたルーク。
セシルを好ましく思う気持ちがありつつ現状を変えるのが怖かったルークの初めての誘いだった。
「なら、久しぶりにゆっくりしようかな?」
「じゃあ、11時から行くか」
「わかった。支度するから部屋には入らないでね」
「りょうかい。」
それから1時間後、セシルはいつもの動きやすい服ではなくレースの付いたワンピースを来てやってきた。
ルークは思わず見とれてしまった。褒めようと思ったが意識してしまい恥ずかしくて言えず、苦し紛れに出てきた言葉は「…似合ってるな」だった。
ルークのそんな反応を見て、セシルは少し驚きつつも「ありがと。」と言った。
時刻はお昼過ぎ、祭りの期間中の街は多くの人で噛み合っていた。
ルークはセシルとの距離を縮めたく、祭りの混雑を理由に手を繋ごうと思った。
しかし、手を触って嫌な顔されたらどうしようなど余計な考えのが浮かび行き場を失っていた右手を見たセシルは、そっとルークの手を握った。
セシルの手は柔らかくて小さかった。
セシルは手を握ってから微笑んでいたが一方のルークは、手を握れた嬉しさ7割、自分から握れなかったことに恥ずかしさ3割でセシルと目を合わせられなかった。
しかし、30分も経てば少しは慣れてきていつも通り会話が弾んでいた、色々な出店を食べ歩きし、様々な催し物を楽しんだ。
ふと、通りの反対にある出店を見るとアークの姿を見つけた。
「よう、いそがしそうだな」とルークが聞くとアークは
「なんだ、なんだ 嫌味かこの色男が!」と冗談交じりに返してくる
「俺だって女の子と祭りに行きたかったのに、親父のせいで…」
「にしても、お前たちがこういう行事に来るなんて珍しいな。ルークが誘ったのか?」
控えめにうなずくとアークはにやにやして
「まぁ、及第点はくれてやる」と言ってきた。
「うるさいな、ほっとけ!」とつい反論してしまうが、ほんとはもっと積極的にならないといけないことは自覚していた。
これが年齢イコール彼女いない歴の、男の気持ちである。