彼女に恋した10日間
pixiv百合文芸コンテスト投稿作品
初めての短編エロなし純百合小説です。
8月20日 夏休みも終わりに近付いてきた。
結局大したイベントもないまま終わってしまうのだろう
「はぁ~なんか面白いことないかなぁ~~」
早瀧麻里奈はやたきまりな 高校2年 帰宅部
今はアニメを見ながらごろごろしている。
中学生の頃から二次元の世界に入り込み、気付けばリアルでは何の取り柄もないただのオタク女になってしまっていた。
もちろん 彼氏いない歴=年齢で、私自身そういうのは諦めている。
そもそも好きな人すらできたことがない。
せめて夏休みくらい何か思い出になることをやりたいなぁ……って思っていたこともありました。
でもこのまま何事もなく進んでいくんだろうな……
寝る前にアニメを見るつもりだったけどもう日付が変わり時計の短針は1を指していた。
少し眠気も来てたのでアニメは諦めてパソコンをシャットダウンするとベッドに寝転んだ。
「明日こそ何かあるといいな...」
目をつぶると急激に睡魔が襲いあっという間に意識は暗闇の底に沈んでいった
///
夢を見た
金髪の女の子
その女の子が私を追いかけるが私との距離はどんどん離れていくだけだった
よく分からないがとても寂しい気持ちにさせられる。
そしてとうとうその女の子は見えなくってしまった...
鳥の鳴き声と窓から入る朝日によって意識が覚醒した。
「ん……ぅぅ~ん」
あれ?私の部屋の天井こんなだっけ?
寝ぼけ眼をこすりながら上体を起こす
「へ?どこ!?」
見たことない部屋だった。
誘拐?拉致?不穏なワードが頭を過ぎりパニックになるが、よく見渡すとすごく豪華な部屋だ。
ベッドはふかふかだし天井にはシャンデリア、カーペットや壁紙もすごく高級感がある。
「自分の部屋で寝てたよね……?」
寝る前の行動を思い出していると先ほどの夢も思い出した。
「誰だったんだろう...」
夢の内容はなぜかしっかりと覚えているが顔は全く覚えていない
いや、そもそも見えなかったような気がする。
しかし夢の内容はこの際どうでもいい
今この状況をどうするべきか考えないと!
自分の体を確認する、寝る前と同じゆったりした部屋着のままだった。
部屋の中を動き回ってもこれと言ったものはない。立派なテーブルや絵画なんかを見る余裕はなかった。
仕方ないので部屋から出てみることにした。
豪華な雰囲気を醸し出す扉をあけて廊下に出る。
綺麗な廊下だった、一面にレッドカーペットが敷かれ歩くのを躊躇うほどだ。
???「あ、お目覚めになられたのですね!」
「ひっ!?」
突然背後から声をかけられて飛び上がった
???「ごめんなさい!驚かせてしまいましたね、とりあえずお部屋へ」
話しかけてきた人物はメイド服を来ていた
え?メイド服?コスプレ?
混乱する事ばかりだがとりあえずメイドに従うことにした。
???「申し遅れました、私こちらでメイドをさせて頂いております シーラ と申します」
腰をしっかり90°折り曲げて深々と挨拶するので私も合わせて自己紹介する
「私は早瀧麻里奈といいます、あの、ちょっと質問いいですか……?」
シーラ「もちろん構いませんよ」
「まずここはどこなのですか?」
「ここはギアエメル王国の城内でございます」
「ぎあ……えめる???」
「マリナ様はどこからいらしたのですか?」
「んっと……どこからって言うと、日本?」
「ニホン?申し訳ありませんが存じ上げません……」
「そもそもここは日本じゃないんですか?」
「はい、先ほど申し上げましたようにここはギアエメル王国でございます。ギアエメル王国をご存知ないのですか!?」
「え!?ぁ、はい、ごめんなさい……」
「あ、いえいえお気になさらず。ニホンというのはとても遠いのでしょう、それならば知らなくても当然でございます」
「でも私昨日は自分の部屋のベッドで寝ていたはずなんです……」
「あなたは昨日城の前で倒れていたので私がここへ連れてきたのですよ」
「え、城の前で?」
「はい、覚えておられませんか?」
「ごめんなさい……なんでここにいるのかも分からなくて」
「記憶が混乱しているのですね、よろしければ記憶が戻るまでここで生活するのはいかがでしょう?」
豪華なお城にいさせてもらえるのは嬉しいことだけど分からないことが多すぎる。
返事を躊躇っていると
「あ、でもメイド長や領主様にも確認取らなきゃ! 確認してきますのでこちらで寛いでいてください」
扉をあけて出ていった
最後の喋り方が素なのだろうか、きっと彼女も大変なのだろう。
部屋に独り残されて暇になってしまった。
何もすることがないのでちょっと外に出てみよう
廊下を進むとすぐに階段があったので降りてみる、同じような景色が続いていたが外に出る扉が見えた
どうやら中庭になっているらしい。
ガチャ
扉は簡単に開く
「おぉ、すごい綺麗……」
流れる水と植物がアートのように入り乱れている。
水を覗き込むようにして見入っていると人影が視界の端に写ったので顔をそちらに向けた。
そのせいで重心がズレて、濡れた石の上で足を滑らせてしまう
「(ヤバっ!?)」
??「危ないですよ」
「へ?ぐえっ……」
首根っこを掴まれて水には落ちず引っ張りあげられる。そのまま体を抱きかかえられてその人を見た。
目の前に見えるのは綺麗な女性の顔
金髪碧眼の誰が見ても美人と思うだろう。
「(うわ…顔近っ……にしても可愛いな……あれ、でも何だか見たことあるような……)」
目が合って動けずに固まってしまう。
なんだか恥ずかしくなり目を逸らしてなんとか声をかけられた
「あの、ありがとうございます……」
「この水は普通の水ではありませんので危険ですよ」
下に落ちている小石を水に投げ入れると同時に小石は蒸発して消えた
「ひっ...」
とりあえずやばいというのが分かったのでこれ以上深く聞かないでおこう
改めて見てもやっぱり綺麗な女性だった。
でも歳は私より下に見える、いくつなんだろう?
それと気になることが一点、あの細い体と腕でどうやって私を引っ張り上げたのだろうか?
「もしかしてあなたが昨日うちの前で倒れていたという方ですか?」
「あ、はい...一応そうです」
「やっぱりそうでしたか、私はここの領主の娘でコルネット=マリアと申します」
「え、てことはお姫様ですか!?」
「一応そういうことになりますね」
くすっと微笑む姿は本当にお姫様らしい。
「あ、すみません私の自己紹介がまだでした...早瀧麻里奈といいます」
「マリナ...私とそっくりの名前ですね」
その笑顔はとても可愛らしいと思った
「そういえば、どうやって助けてくれたのですか...? 失礼ですが私を引っ張るほど力があるようには見えないので...」
「あぁ、それは身体強化の魔法ですよ」
「へ?強化?魔法?」
頭の上にクエスチョンマークが3つほど並んだ
「待って待って!魔法って何?」
「何と言いますと??」
あ、このお姫様ほんとに分かってなさそうだぞどうしよ
「あの、私魔法なんて使えなんですけど...」
「えぇ!?そうなのですか!病気かなにかですか、あっこんなこと聞くのは良くないですね...」
本気で驚いてるしあたふたしてるのも微笑ましいけど。
「いや、そういうのじゃなくて、もともと魔法なんてないんですよ」
「マリナ様がいた場所は魔法も存在しないということですか...」
「そういうことです」
「マリナ様がいた場所は本当にこことは違うのですね、ちょっと興味が湧いてきました」
ん?今麻里奈様って呼ばれたよね、嬉しいけどいいのかな 一国のお姫様にそんな呼び方させて...?
...
「...なるほど記憶が曖昧になっているのですね。それなら落ち着くまで是非うちで生活してください」
「いいんですか?」
「もちろん、あなたのことをもっと知りたいんです」
その顔でそんなこと言われたら勘違いしそうになるじゃん...
「あ、お父様に一応確認取らないと、でも心配しないで、私の頼みなら絶対断らないはずだから!」
「そっか、安心しました」
「ふふ、それじゃあ身体検査するから待っててね」
「え?」
身体検査って何するの?まさかこの優しいお誘いは罠で本当は奴隷にされられるのかも...
気付けば後ろに笑顔のメイドがずらりと並んでいた
「待って? ねぇ? ちょっとぉぉぉぉぉぉお!!」
複数のメイドに抱えられてある一室へと連れていかれる
あっ、ちょっとそんなとこ……///
やぁ……らめぇぇぇ……
...
「あ~恐かった……普通の身体検査だったね」
マリア「ふふっ、そう言いましたよ」
「裸に剥かれたまり時はどうなるかと思いましたよ」
純潔を奪われる覚悟を決めたほどだ
「まぁまぁ、危険がないと分かったのでよかったではないですか。それにしてもほんとに魔法は使えないのですね……魔法の扱いに得意不得意はありますけど魔力は本来皆持っているはずなのです」
「でも私は全く持っていない…と」
「そうです、だからこそ興味深いです。もっとお話を聞きたいところですが私は公務がありますのでここで……今日はゆっくりしててくださいな」
「あ、分かりました」
「朝食と昼食は部屋に持っていかせますが夕食は是非一緒にいただきましょう」
「あ、はいっ」
爽やかな笑顔を見てこちらも自然と笑顔になれた
部屋に戻りベッドに寝転んで頭の中を整理する
ここはギアなんとか王国の城内
しばらくここで生活させてもらえる
あと魔法が使える
どう見ても別の世界に来てしまったとしか言いようがない。
まだはっきりと魔法を見せてもらったわけではないけど嘘をついている感じじゃないし、今度見せてもらえばいっか。
元の世界に戻る方法は分からない
もしかしたら寝て起きたら戻ってる可能性もあるし、何か条件があるかもしれない。
ただ元の世界に戻りたいかと言われるとなんとも言えなくなる、戻ったところで籠ってアニメを見るだけの生活だ...
友達もたいしていないし家族とそんなに仲がいい訳でもない、どうせならここで暮らした方がいいんじゃないかな...
しかし魔法なんてあるこの世界で上手く生きていける自信もない……
それにお姫様を見たとき初対面のはずなのにどこかで見たことがあるような不思議な違和感を感じた。
コンコンッ
いろいろ考えていると誰か来たようだ
「はい、どうぞ」
「失礼したします、朝食をお持ちいたしました」
「あ、シーラさん、ありがとうございます」
「30分ほどしたらまた伺います」
そう言ってすぐに出ていった
テーブルに置かれた朝食は彩りが良くとても美味しそうだった
「いただきます」
こんなにちゃんとした朝食は久しぶりな気がする
あ、美味しい……こんなの食べさせてもらえるならずっとここにいてもいいかも……
ゆっくりと食事を済ますと見計らったかのようなタイミングでドアをノックされた
「はい、どうぞ」
「失礼したします」
シーラひとりだけだと思っていたがシーラの後ろにへばりついている子がいた
「えっと、その子は?」
「この子はメイド見習いのレナといいます、ほら自己紹介して」
レナ「あ、えっと……レナ……です」
顔を赤くしてシーラの後ろに隠れてしまう
「ちゃんと挨拶しないとダメでしょ」
「うぅ……」
かなり引っ込み思案な性格みたいなのでこちらからコンタクトを取ってみる
「えっと、レナちゃんだっけ? 私は早瀧麻里奈っていうの、歳はいくつ?」
身長は私の3分の2程度なので少し目線を合わせるようにしゃがんで優しく問いかけた
「9歳です……」
「9歳かぁ、その歳でメイドのお仕事なんてすごいね~」
頭を軽く撫でてあげると表情が和らぐ
「レナちゃんよろしくね」
「よろしく、おねがいします」
もうシーラの後ろには隠れなかった
「今日は城内をご案内しますが練習の一環としてレナも同行させますので」
「分かりましたおねがいします」
「では1階のほうから順に行きますのでそこまで付いてきてください」
シーラ レナ 私の順で歩く、不意にレナがこちらを見たので笑顔を返した。
レナも笑みを浮かべて前を向き直る。
歳相応の可愛らしい反応、ある程度心を開いてくれたようで安心した。
「こちらがエントランスです、主に来客を招く際に使用されます」
かなり大きく派手な装飾がなされている。
それから1階の各部屋を簡単に案内してもらった。
調理場や食事する部屋、客間など大まかにだがなんとなく覚えた。
しかし大きなお城なので移動するにも時間がかかる
2階の案内の途中で昼食をはさみつつそれは続いた。
ここにはメイドが暮らしている部屋が並んでいたり、私に用意してくれたような空き部屋が並んでたりと高級なホテルのような雰囲気を感じさせる
さらに奥へ進むとシーラの足が止まった
「ここから先は許可なく立ち入りことは禁止となっております」
「この先には何があるの?」
「王国の機密事項はこの中にあるとされています。私もあまりここには来ることがありませんので詳しくは分かりません。王室もこのフロアから上に行けばあるみたいですよ」
「なるほど、そういえば今まで女性しか見てないんですが男性もいるんですよね?」
「もちろんいますよ、基本的には護衛隊に配属されます。こちらは私達より上のランクになりますのでそちらの立ち入り禁止区域の中の下層にいると思います」
「ということはその立ち入り禁止区域の中でもさらにランク分けがされてて、入れる場所と入れない場所が決まってるんですか?」
「はい、そうなります。普通の護衛隊と領主様の側近では位が異なりますので」
「なんにしろここには入れないわけですね」
「はい、そこはご理解いただけると幸いです」
「レナも今日ついてきてどうでした?」
「えっと、マリナさんと一緒で、楽しかったです!」
「まだお遊び気分が抜けてないようですがまぁいいでしょう」
レナの雰囲気に注意する気も削がれたようでシーラも笑っていた
「夕食まで少しばかり時間がありますのでお部屋でお寛ぎください」
「分かりました」
「夕食の時にまたお伺いします。お部屋の場所は大丈夫ですか?」
「もう覚えたので大丈夫ですよ。レナちゃんも頑張ってね」
手を振って独りで部屋に戻った
城の見学だけでこんなに疲れるとは……広すぎだろここ!
はぁ、でもレナちゃんとは打ち解けたしまぁいっかぁ
ぼーっとして今日のことを思い出しているといつの間にか時間が経過していたようだ
コンコンっ
「はい、どうぞ」
「失礼したします、夕食の準備が出来ましたので伺いました」
シーラに連れられて歩く
さっき説明された禁止区域の中に入って行くのは少し躊躇ったがついて行く
ある部屋の前で歩みが止まった
「こちらになります」
扉を開けて中に入るように言われたので少し緊張しながら入っていく。
めちゃくちゃ豪華じゃんなにこれ……!
アニメとか映画とかでよく見る貴族の会食で出てくる場所だよここ
大丈夫かな、こんなとこで上手く食事できるのかな...
マナーとかわかんないよぉ……
「マリナ様いらっしゃい♪」
おろおろしているとお姫様が声をかけてくれた。
「あ、はい、お邪魔します……」
シーラは案内役だったのだろう、すでに姿はなかった。
「どうかしましたの? 顔色がよろしくないですよ?」
「ごめんなさい、ちょっと緊張しているだけだと思います」
「そうですか、もっとリラックスしていいんですよ。あ、お父様が来ましたね、こちらへどうぞ」
そのまま奥の席へ座らされた
間もなく荘厳な雰囲気を纏った男性が現れる。
おそらくお姫様の父、領主様だろう
何か言われるのだろうか、じっとこっちを見られている。
恐くて目が合わせられない……
「娘から聞いてるお客さんとはそちらのお嬢さんかな」
急に声をかけられてビクッと跳ねてしまった
「は、はい! こちらでお世話になっております、早瀧麻里奈と申します!」
緊張しているせいですごく早口になってしまった……
ちゃんと伝わっただろうか
「わたしはこの国の領主をしているコルネット=モーガンという、娘がたいそう気に入ってるようなのでどうかしばらくいてやってくだされ」
「え、お父様!そういうことは本人の前で言わないでくださいよ~~」
お姫様は頬を赤く染めて反論している。
その光景は微笑ましくてさっきまでの緊張は嘘のようにほぐれていく。
何よりマリア様に気に入ってもらえているという事実が嬉しかった。
...
「ごちそうさまでした、ご一緒していただいてありがとうございます」
「娘が喜んでいるからね、わたしはそれだけで十分だよ」
最初に見たときの顔とは違い、娘を思う父親の顔だった
ほんとうに優しい方なのだろう
「そうだ、これから入浴なのだが娘と一緒に入ったらどうだ?」
「え!お、おおお風呂ですか!? でもマリア様が……」
言いながらマリア様の方に視線を向ける
あ、マリア様すっごい嬉しそう
「じゃあお言葉に甘えて……」
「着替えは用意させますから早速行きましょう!」
「わわっ、そんなに引っ張らなくても行きますよぉ」
というわけでお姫様と一緒にお風呂に入ることになりました。
「マリナ様とっても綺麗な体をしていますわね」
「いやいやマリア様に比べたら貧相ですよぉ……!」
「そんなに卑下しなくていいじゃない」
「あ、ありがとうございます……あの、1つ提案なんですが、マリナ様って呼ぶのやめませんか……」
「どうして?」
「え、だってお姫様に私みたいな凡人に様を付けさせるのはおかしいし、その、何か距離を感じてしまうから…………ご、ごめんなさい急に変なこと言って」
「マリナ?」
「あ……ありがとうございます、敬語もいらないですよ」
「わかった」
なんであんなことを急に口走ったのか分からなかったが胸のつっかえが取れたように心が晴れた気がした
「うわ!なにここひっろ!」
「お風呂よ」
「知ってます! さすがお城すごい……あの何かマナーとかありますか?」
「いつも通りのマリナでいいよ」
「それは良かった...じゃあ体を洗いましょう」
「背中流してあげるね」
「えぇっ!そんなお姫様に……」
「私がやりたくてやってるんだから気にしないで」
「そういうことならまぁ」
「じゃぁ座って座って」
マリア様の言う通りに座って背中を向ける
「私ね本当はお姫様じゃなくて普通に暮らしたかったの」
「え..」
「小さい頃から言葉遣いやマナーを教わっていたけど、なんだか息苦しくて好きじゃない……だからマリナからそんな風に歩み寄ってくれて嬉しかった」
お姫様にそう言ってもらえるとこちらも言った甲斐がある
「だからね、マリナのこともっといろいろ教えて。いっぱいお話したい」
「そうですか、それではたくさんお話しましょう!」
「やった! それじゃあまずは」
もにゅんっと私の胸が掴まれた
「ひゃあっ!ちょっと……前は自分で出来ますよ~~」
「さっきマリナは自分の体が貧相って言ってたけどこれはなんなの~!」
さらにマリア様が揉みしだいてくる
「ごめんなさい~~胸はありました~~!」
...
「ふわぁぁ~~~気持ちいぃ~~~」
洗いっこは無事(?)終えて湯船に浸かる。
泳げるほどの広さは快適だ
「マリナの髪綺麗だね」
いつの間にか横に来ていた私の頭を触ってきた。
「髪こそマリア様のほうが綺麗じゃないですか!」
さらさらの金髪なんてアニメでしか見たことないよ……
「あらそう?嬉しい」
「私じゃなくても周りのメイドとか父親似とかからもたくさん褒めてくれますよね?」
「うん、たくさん褒めてくれるよ。でもマリナに綺麗って言われるのが一番嬉しいかもしれない」
「そう、ですか……」
...
マリア様の肩が触れる、柔らかい
2人背中を預けてゆったりと湯船に浸かっている。
「私はなんでここに来たのでしょうね……」
「もしかして私に逢うために?」
そう言って悪戯に笑う
冗談だと分かっているのにほんとにそうなんじゃないかと考えてしまう
まだそんなに長時間浸かってないはずだけど体が熱くなってきた。顔も火照ってきて頬を染めている。
「そろそろ上がりましょうか?」
「うん、そうだね……」
「ねぇ、今日は一緒に寝るでしょ?」
「えっ!寝るってそれいいんですか?」
「私ね明日から隣国への遠征でしばらく会えないの、だから…いいでしょ……?」
うぅ……そんな目で見られたら断れないじゃん……そもそも断る気ないんだけど。
...
周りの人間に許可を得たのでお姫様の寝室にやってきた。
「おぉここがマリア様の部屋ですか」
「待って」
「はい?」
「私のことマリアって呼んで、あと敬語も禁止!」
「え!でも……」
「私には敬語なんていらないって言ってくれたじゃない!」
確かにそうだ、向こうに歩み寄らせた癖にこちらが一歩も動かないのはおかしいじゃないか。
「マリア……これでいい?」
「マリナ……ありがとう、一緒にお話しましょう」
ぐっと距離が縮まった気がした
「マリナがいた国のお話を聞かせて...!」
私のいた学校や家族、日本のことをたくさん話した。
アニメや漫画、こないだ行った親戚の結婚式の話なんかもした。
マリアはその話をすべて興味津々に聞いてくれて会話が弾んだ。
「ニホンってすごいのね、魔法が使えないのにこんなに便利なんて!」
たしかに魔法は便利だけど、現代日本の張り巡らされたインターネットの情報網は比較するものがないレベルだ。この世界にいると ''高度に発達した科学は魔法と区別がつかない'' という言葉に信憑性を感じる。
「へへ、すごいでしょ~」
「すごい!もっと聞かせて!」
「いいけど今度はマリアの話聞かせて欲しいなぁ」
「あ!ごめんなさい私ばっかり聞いちゃって」
次はマリアがこの世界の話をしてくれる
この国のこと
周りの国のこと
家族のこと
魔法のこと
いろんな話を聞いた。やっぱり日本とは全く違う、マリアが驚くのも無理はない。
そこで気になったのは隣の国の話、どうやらこの国とうまく行ってないようでそれについての会談のために遠征に行くらしい。
どのくらいの期間ここを離れるのかも分からないし不安だ……
「隣の国とは大丈夫なの……?」
「政治的問題だから一筋縄でいかないかな……」
そういうことなら難しい問題なのだろう、私が聞いても力にはなれないので深くは聞かない
「あとお父様の性格があれだから……」
「ん?性格?」
「優しすぎるの……敵も味方も救おうとする姿勢は尊敬するのだけれど一部の人間からは反感を買うときもある...」
優しすぎるか……日本に生まれていたらなぁ……
これも私がどうにかできる問題ではない。
「じゃあ次は魔法教えてよ!どんなのがあるの」
少し空気が重くなったので話題を無理やり変えていく。
「魔法はいろいろあるよ! 身体強化だったり念動力だったり炎だしたり・・・」
...
魔法の説明はずっと聞いていられるほど面白かった。
相変わらず現実感はないのだけれど、まるでアニメの世界に入り込んだようで自然と気分が高揚する。
「そんなにいっぱい種類あるんだね~私も使ってみたかったなぁ」
「マリナは魔力がないから使えないよ~、あ、もうこんな時間……そろそろ寝よっか」
「うん、そうだね」
2人同じベッドに入る
「ねぇマリナ」
名前を呼ばれてマリアに顔を向ける。目の前に顔があってちょっとびっくりした
てか近いよ……
「やっぱりマリナって可愛いね」
一気に顔が熱くなる、こんな綺麗な子に可愛いなんて言われて嬉しくない訳がない。じっと見つめられて耐えられずに視線を逸らしてしまった。
「もう何マリナ恥ずかしがってるの~」
「だってそんなに見られたら恥ずかしいじゃん……」
目を閉じる。今まで味わったことのない感情が溢れてくる。それを私はまだ理解できない。
心臓の鼓動って自分でもこんなにわかるんだってくらいドクンドクンと脈打っている。マリアに聞こえたら恥ずかしいな…と思うとさらにドキドキしてしまう。
今までこんなに仲のいい友達がいなかったから緊張してるのかな……でもこのままじゃ眠れない。どうしよう……
「ねぇマリア、明日からしばらく会えないんだよね……いつ帰ってくるの?」
「1週間はかかるかも」
「遠征ってそんなに遠いんだ……」
「せっかく仲良くなれたのにごめんね……」
「帰ってからまたいっぱいお話しようよ」
「うん、それじゃまた明日。おやすみなさい……ちゅ」
「……!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
待って待って今マリアにキスされた?されたよね?これどういう意味のやつ!?
マリアはすでに目を閉じて寝る体勢なので声はかけない。
胸がどくんどくんと大きく跳ね回り落ち着かない
はぁ……これじゃ寝られないよ……
どうしたんだろ私……マリアの気持ちも自分の気持ちも分からない、少しもやもやする。
隣からはすぅすぅと寝息が聞こえ始めた。
私も寝よう
「……おやすみ」
仕返しにキスしてやろうかと思ったけどそれは出来なかった。
窓から太陽の光が入り込んでいる
一瞬どこにいるのか分からなかったが、ここはマリアの部屋だと思い出した。元の世界に戻ってはいない。
横を見るとマリアが最初と同じ体勢で眠っている
可愛い寝顔、昨日合ったばかりの私にこんな無防備をさらして大丈夫なのだろうか……
もちろん私が何かするわけじゃないから大丈夫だけれど……自然と手が伸びて愛くるしい金色の束を撫でていた。さらさらしてて気持ちいい。これではまだ起きないようだ、すぅすぅと定期的に呼吸が続いている。
白く透き通ったような肌に触れた、すべすべしたほっぺをずっと触っていたい。
「……ぅん……」
マリアが声を出してビクッと手を離してしまった。何でこんなびっくりしてるんだろ……
覚醒しかけたマリアの意識は再び底へと沈んでいく。定期的な呼吸に戻った。また寝ちゃった、可愛いなぁ……
しばらく見ていると私も眠くなってきたのでそろそろ起きてもらおう。ほっぺをふにふにして遊ぶ。やわらかい。
「ぅん……ん……」
なかなか起きない、やばい楽しい
むにむにむにむに
「ん……」
マリアの目がゆっくりと開いて間近で目が合う。数秒のラグの後、かぁぁ~~~とマリアの顔が赤く染まる。
「~~~~~~~~~~///」
「あ、起きた。おはよう」
「あの、み、見た?」
「見たって何を?」
「その…寝顔……///」
「うん、ずっと見てたよ」
「そんな…すぐ起こしてよ~~」
「だって可愛かったもん、それにほっぺぷにぷにしててもなかなか起きないんだよ、面白かった~~」
「~~~~~~~~~~~/// ちょっと、ダメ……恥ずかしい……///」
布団に潜って顔を埋めてしまった。マリア寝顔見られるのそんなに恥ずかしいのね、赤くしちゃってほんとに愛らしい。私もドキドキしてしまった
この時間をもっと一緒に過ごしたいと思った。しかし今日からしばらく会えなくなることを思い出す。なんだろうこの気持ち……ただ寂しいだけじゃない、小さい頃お祭りでお母さんとはぐれたときのような、孤独感、寂寥感に苛まれる。
マリアはまだベッドから出てこないので声をかけて部屋を出た。メイドさんに挨拶をして着替えを持ってきてもらったので別室で着替える。マリアの部屋にもメイドさんが入ったので支度は大丈夫だろう。
しばらくすると待機していた別室へ誰かが来た。
こんこんっというノックの音に返事を返す
そこにいたのは金髪の女の子
「あ、マリア……」
「もうすぐ出発するからちょっとだけお話しようと思って」
「そっか、私待ってるからね帰ってくるの」
「うん、行く前にひとつだけ言っておきたいことがあるの……」
「なに?」
マリアは何も言わずに私に近づいてくる。そのまま耳元まで近づいて囁いた。
「私ねマリナのことが好き」
ドクンと心臓が跳ねる。マリアが離れたのに私は全く動けなかった。ほんとはそのまま抱きしめたかったのに私自身の気持ちが分からないから、何も言えず、動けずにただそこに立ちすくむだけだった。
扉の前で一度振り返ったマリアと目を合わせる。頬を淡い桃色に染めた微笑みが記憶に焼き付いた。
マリアが出発してしまうと慌ただしかった城内は静まり寂しさを感じる。
メイドや残った騎士にとっては実質的な休暇ということになるのでいつもより空気は軽い。
部屋に入るとマリアのことを考える。私はマリアをどう思っているのだろうか。最後に見たマリアの表情を思い出すとまた心臓が暴れだしそうになる。
「好きになってもいいのかな……」
とは言ったものの、そもそも好きになるってどういうことなんだろう。考えれば考えるほど分からなくなる。この感情が、この胸のドキドキが好意なのかも分からなかった。
食事のときも入浴のときも気づけばそのことを考えていた。ベッドに潜り目を閉じるとマリアの笑顔がはっきりと浮かび上がる。
寝れないなぁと思いつつも染み付いた生活習慣によって自然と眠りに落ちていた。
朝になる。目が覚めて最初に考えたのはマリアだった。帰ってきたら何をしようかいっぱい考えた。また一緒にお風呂に入りたい、もっといろんなことをお話したい、一緒に遊びたい…………
...
そのまま何事もなく3日が経過した。
会いたい、マリアに会いたい……その想いは日に日に強くなっていく。
"私ねマリナのことが好き"
マリアと離れてやっと分かった気がする。一緒にいろんなことをしたい、会いたい、会えないとずっと考えちゃう……この感情の意味
「私もマリアのことが好き」
あ、やっぱりそうだったんだ……口に出すことで胸のつっかえが取れたような気分になった。
でも、やっと分かったのに、この気持ちを伝える相手は今はいない。私より早く気持ちを理解して想いを伝えてくれた人に早く返事をしたい。胸のつっかえが取れた替わりに会いたい欲求が急激に膨らんでしまった。
...
マリアと離れて5日が経過した。その日の夜中ふと目が覚めてぼーっと未覚醒のままトイレへと向かっていたとき、寝ぼけていたせいで立ち入り禁止区域に足を踏み入れてしまっていた。
「(あ、やば! バレないうちに戻らないと)」
急いで部屋に戻ろうと思ったその時男性2人の話し声が聞こえて咄嗟に物陰に隠れた。
「(バレてない……よね?)」
近くで話しているが聞こえそうで聞こえない。
戻るタイミングを図るためにもどうにか聞き取りたい。耳を澄まして集中する。
「2日後には帰ってくる、その時しかない」
「でもどうやって……」
「王を失墜させるには王女を使うのが手っ取り早い」
「そうか、たしかに帰還されるとき王の護衛に人をさく分王女の護衛が甘くなる。そこでいくしかないな」
「その通りだ、甘っちょろい考えだから隣の国に舐められるんだよ。ここらで分からせてやらないとこの国は終わりだぞ」
「分かった、他にも人を集めておくよ」
「あぁ、必ず成功させる。王女に罪はないがこの国のために死んでもらうしかない」
驚いて声が出そうになったけど口を押さえて我慢した。
「(このままじゃマリアが殺される……)」
そんなこと信じたくない。何かの冗談だと思いたい。でも夜中にあんな雰囲気で話しているのはとても冗談には聞こえなかった。
伝えなきゃ...
男たちが離れたので急いで部屋に戻ってきた、トイレに行くことも忘れてシーラの部屋を訪ねる。
ノックしても返事はない、さすがに寝ているかな……
諦めて戻ろうとしたとき、キィっとドアが開いた。
「こんな夜中にどういたしましたか?」
「あっ、夜遅くにごめんなさい、話があります、いいですか」
シーラはそれ以上何も言わずに中に入れてくれた。
さっき見聞きしたことを包み隠さず報告した。
「とりあえず立ち入り禁止区域に入ったことは一旦見逃しましょう。それでその話は本当なのですか?」
「もちろん本当です!だから迷惑を承知ですぐに報告に来たのです」
「たしかにあなたが嘘をつくメリットはありませんね。まぁ実際領主様に不信感を抱いている人間が一定数いると噂されていましたので可能性は考えられます」
「お願いします!命がかかってるんです!!私の命も使っていいですから!!!」
「……分かりました。あなたのその覚悟を信じます。もともとその日私達の仕事は姫様の護衛ですからね、それが少しばかりややこしくなるだけです」
「あ、ありがとうございます!!」
少し考える動作をした後シーラは笑って快諾してくれた。
「騎士たちは私たちメイドを下に見ているところがあります。おそらく今回もメイドならどうにでもなると高をくくっていることでしょう」
「あなたは姫様を直接逃がす役回りを与えます。上手くやってくださいね」
「分かりました!」
「ですがまだ情報が足りません、メイドから諜報員を何人か出して作戦のあぶり出しを行います。姫様が帰還なされるまで時間がありませんので、すぐに行動に移します」
メイドたちは迅速だった。相手に悟られず情報を盗み取り作戦を立てていく。諜報員によって私の話は信憑性が増して士気をあげていった。
当日、緊張で胸が張り裂けそうになる。メイドたちは信頼しているけど私自身が上手くできるかどうか……いや、やらなきゃいけないんだ!やらないとマリアに会えない。
メイドたちは一見普段通り振舞っている。それは騎士も同様だった。もしあの時話を盗み聞きしていなかったらと思うとぞっとした、マリアが殺される瞬間を呆然と眺めることしか出来なかっただろう。
大丈夫、出来る!
パンッと自分の頬を叩いて気合を入れた
どうやら見えるところまで帰ってきたらしい、少しだけ騒がしくなる。私の心臓も同時に騒がしく動き始めた。落ち着いて、メイドが上手くやってくれるから、私は最後だけ。
領主一行が城に到着した。
騎士の半数以上が領主の護衛へと回る。予定より数が少ない、やはり作戦は決行されるのだろう。
メイドたちも気付かれないように準備を始めていた。
お願い、上手くいって……
マリアが到着して予定通りメイドが護衛に回る。ここまでは本来の予定通りなので騎士たちも気付かない。
マリアの部屋付近はこの時間ほとんど人がいなくなる、そこに行った瞬間に狙ってくるだろう。
部屋の前にくるとメイドが数人とマリアだけになった。
来た!
複数方向からの狙撃、しかし把握していたメイドたちは魔法による障壁であっさりと防ぐ
「なっ!? くそっ!」
ここで引けない騎士はさらに追撃をするが同じ攻撃はもちろん通さない。
「ここで国を変えなきゃいけないんだ!」
騎士にも思うところがあるのだろうが、それでも姫様を殺させるわけにはいかない。
接近戦に持ち込んできた
身体強化によってその速度は人間技を超えている
お互いが魔法により強化された戦闘は初めて見るがとても目が追いつかない。
しかしここまで私たちのシナリオ通り、よって戦況はこちらに傾く。いつの間にか増えたメイドの騎士の死角からの攻撃によって動きが止まる。
「ちっ……メイドごときが……」
「姫様を亡くすわけにはいきません。彼女・・が待っていますから」
騎士が笑ったような気がした
ん?待ってこれ!?
あっ!別の場所から騎士の一人がマリアに近づいていた
ヤバイと思ったときにシーラの声が飛び込んできた
「マリナ様!お願いします!!」
極度の緊張で体が動かない。
動いて!お願い!!
気づけば駆け出していた
「マリア!!!!!」
マリアの腕を掴んで部屋の中に飛び込んだ。
不意をつかれた騎士は隙が大きくあっさりとメイドによって無力化される。
それと同時にメイドの増援が来て勝敗は決した。
...
「マリア!大丈夫だった!?怪我はない!?」
「うん、大丈夫……」
「そっか、よかったぁ~~~~」
安堵しているとマリアがじっとこっちを見ていることに気がついた。
「ん、どうかした? やっぱりどこか怪我してた!?」
「ううん、すごく怖かったの……けどマリナが手を握ってくれて助けてくれて……うぅ……マリナぁぁ~~」
がばぁっと私の胸の中に飛び込んできたのでしっかりと受け止める
「おぉ~よしよしこわかったね~~」
「子供扱いし''な''い''て''~~ごわかっだの''~~」
子供扱いされたくないといっても今はどう見ても子供そのものだ
抱きしめて頭を撫でていると私も自然と涙が出てきた。
緊張したせいで忘れてたけどやっとマリアに会えた喜びが浮かび上がってきたんだ。
「マリアに返事しないといけない」
「返事って?」
「1週間前マリアが私に好きって言ってくれたこと」
「あ、覚えててくれたんだ……」
私の胸に抱かれたまま頬を赤く染める姿は可愛らしい。そんなマリアが大好き。それを今から伝える。
「私もマリアが好き!大好きだよ!」
マリアは少し驚いた顔になったがすぐに微笑みに変わる
「あ、ありがとう、わたしもだいすき...........ちゅ……」
「ん!?……ちゅ……」
マリアに唇を奪われてしまった。初めての感覚だったが何よりも温かかった
「これからいっぱいお話していっぱい遊ぼうね」
「うん!」
...
久しぶりに夢を見た
金髪の女の子が私を追いかけてくる
マリアが私を追いかけてくる
あっ、これこの前見たあの夢だ……
あの女の子はやっぱりマリアだったんだ
私も手を伸ばすがマリアには届かない
それどころか距離はどんどん離れてマリアは見えなくなった。
マリアとはもうお別れなんだ
目が覚めてもその夢ははっきりと記憶に残っている。
マリアとの別れがすぐそこにあることを理解した。もともとどうやってここに来たかも分からないんだ、いつここから消えてもおかしくない。
いやだ、帰りたくない、せっかく気持ちを伝えられたのに。でも何故か確信している、マリアに会えるのは今日が最後なんだと……
マリアは横で眠っている。10日ほど前の朝見た寝顔と変わらない。あぁもうこれも見れなくなるんだ……
つんつん
ふふっやっぱり起きない
そのままつついてるとマリアの目が開いた
「ん……ぁ、おはよう……///」
「おはよ」
相変わらず寝顔を見られるのは恥ずかしいらしく顔が赤くなっている。それを見て私は笑う
「マリナ、どうして泣いてるの?」
「え? 泣いてなんか……ぁ」
笑っているはずなのに目からは涙が溢れ出してした。泣いてちゃだめだ、話さないと。
「怖い夢でも見た?」
「ううん違うの、全く違うわけでもないけど、マリアに言わなきゃいけないことがあるの」
「うん?」
「私ね元の世界に戻らなきゃいけないみたいなの」
「え、どうして急に……」
「ここに来るときと同じ夢を見たんだ。多分……いや、確実に今日が終わると同時に帰ることになる」
「そんな...嘘でしょ!もっといっぱい遊ぶって、もっといっぱいお話するって言ったじゃない!!」
「私もそうしたかった!だけどこれは私の意志でどうにかできることじゃないんだ……」
「せっかくお互いの気持ちが分かったのにこんなのって...これが運命なのかな...」
マリアは信じようとしなかったが冗談ではないと理解して諦めた
「じゃあさ、日付が変わるまでいっぱい遊ぼ……いっぱいお話しよ……」
「分かった、今日はずっと一緒だよ。そして最後の時までは泣かない」
...
この国はテレビもゲームもないので、私にとってそんな当たり前のものを話すだけでもマリアは驚いて興味津々に聞いてくれる。私が大好きなアニメの話をしたり、漫画の話をしたりしてもしっかり聞いている。表情豊かで愛らしくて、その顔をもう見れなくなると思うと泣きそうになったが我慢した、泣かないって約束したから。
マリアからは魔法を見せてもらった。マリアは特別魔法に特化している訳ではないので簡単なものしかできないと言っていたが、全くできない私にとっては十分すごいものだった。
身体強化で重いものを持ち上げたり、触れるだけで温度を測ったり、軽い傷を治したりと私たちの世界では機械や薬に頼っていることが自分の力でできている。
一緒にご飯を食べた
「マリア、はいあ~ん」
「あ、あ~ん……んむ……///」
恥ずかしがりながらもちゃんと応えてくれる
「美味しい?」
「うん、おいしい……じゃあ次こっちからね、あ~ん……///」
「マリアの方が恥ずかしがってるじゃない笑」
「だって!仕方ないじゃん……早く食べてよ」
「あ~ん……あむ……///」
これ食べる方結構恥ずかしいな
「マリナも照れてるじゃない」
2人して笑いながら食事を続けた。
次は外で一緒に遊んだ。レナちゃんとシーラも呼んで久々に体を動かした。シーラは保護者役として見ているだけだったが常に楽しげな表情だったので安心する。
「はぁはぁ……久々にこんなに走った……もう無理...」
「もう終わり~?元気足りないな~?」
「レナちゃんはすごく元気だね」
「走るのとくいなんだよ!」
マリアもピンピンしてるけどこっそり魔法使ったりしてないよね?
空は綺麗な夕焼けだった
「ねぇ、一番高いところ行く?」
マリアに誘われてついていくとお城の最上階、外に出られる場所があった。
「こんなところあったんだ」
きぃっと音を立てて扉が開くと金色の光が入り込む。
そこは絶景だった。左を見ると美しい山々、正面は延々と続く草原、右は海になっていた。これが水平線の彼方まで続いている。
「わぁ……綺麗……」
夕日の金色の光がすべてを輝かせていた
「綺麗でしょ、でもこんな綺麗な夕焼けは初めてかも」
ふと横を見るとマリアも金色の光に照らされて輝いていた。金色の髪がさらに鮮やかに見える。
顔を近づけるとマリアは静かに目を閉じてくれた。唇が重なり合う。「ん……ちゅ……」
ずっとこのままでいたかった、それほどに心が満たされた。唇が離れる瞬間とても寂しさを感じたが目の前に笑顔のマリアがいるとそんな感情もどこかに行ってしまう
金色の景色を記憶に焼き付けた。
「汗かいちゃったしお風呂入ろっか」
一緒にお風呂に入った。
マリア「初めて会った日を思い出すね」
まだ10日しか経ってないのに随分昔のことに感じてしまう。
「一緒にお風呂入るって言われたときはびっくりしたよ~」
「あはは……我ながら大胆だったねあれは」
今は私がマリアの背中を洗っている
「ねぇ、10日前お風呂で私にしたこと覚えてる?」
「え……あっ待って! あっそこは自分でできるからぁ~~///」
「こないだの仕返しだよっ!」
2人で笑い合う声が響き渡る
それを聞いたシーラも静かに微笑んだ
湯船に浸かると落ちついた。
静かになったところでマリアが口を開く
「ほんとにいなくなっちゃうの……」
「うん、あと数時間しかないね」
「別の世界ってことはもう2度と会えないってことなのかな……」
「………………」
答えは分かってるのに返事はできなかった。考えないようにしていたけど元の世界に帰るともう会うことは出来ないだろう。
「私ね、初めて人を好きになったの。あなたを最初に見たとき胸がどくんってなっておかしくなったのかと思った。でも恋だって気付いて嬉しかった。初めて好きになった人がマリナでよかった」
「私もだよ。まさか初恋が女の子になるなんてね……しかも金髪美人のお姫様ときた。改めて考えてもアニメみたいだなと思う。マリアに告白されてからずっと自分の気持ちを考えてたけどなかなか恋だって気付かなくて悩んでた……でも気付けたときふっと心が軽くなった気がしたんだ」
女の子同士での恋愛なんてないものだと無意識に思い込んでいただけかもしれない。でも自分の感情に気付いたときそんなことは些細なことだと思えた。愛する相手の性別や立場なんてものは関係ない。その人を好きっていう感情をしっかり受け入れることが大切なんだって分かった……
...
お風呂から上がり夕食も一緒に食べた。
楽しい時間はどうしてこんなにも早くすぎてしまうのだろう……他愛ない会話をしたりお互いに髪型をいじって遊んだりしていると23時を回っていた。
時計を見て思ったより時間が進んでいることにドキっとする。もうすぐお別れなんだと思えば思うほど胸が締め付けられる。
悔いのない別れなんてない。でも出来るだけ悔いは残したくないからギリギリまで戯れよう。
マリアの顔を両手でむにゅっとつぶすと口がおちょぼになって面白い
「んぁ……?」
「ぶふっ!変な顔!」
「!?ん~~ん~~!!」
なにやら反抗しているようだが喋れてないのが可愛い
「も~急に何しだすのよ」
「えへへ、面白そうだったからつい」
その時こんこんっとノックの音が聞こえた。
「あ、間に合ったのね。マリナちょっと目をつぶっててくれない?」
「え、うん分かった」
突然何をやるのか分からなかったがマリアを信用してるので大人しく目を閉じた。
「目をつぶったままでいてね。手伝うからこれ着てみてよ」
持ってきてくれたシーラとマリアが一緒に何かを着せてくれる。よく分からないがとりあえず身を任せて着替えていく。
「出来た!じゃあゆっくり目を開けて、前に鏡があるから」
そう言われて目を開けると鏡に自分の姿が映りこんだ。始め私だと気付かなかった。
「え、これってウエディングドレス……?」
「そうなの!マリナが結婚式の話してて素敵だなって思ったから作ってもらったのよ」
「もしかしてシーラさんが?」
「シーラには面倒をかけちゃったわね」
「いえいえ姫様の頼みであれば何でもご用意するのがメイドの務めです」
短期間でこれだけのものを作れるなんてさすがメイド
「シーラさん、マリア ほんとにありがとう!」
「私とマリナの結婚式だね……」
「うん」
「結婚式はさキスするんだよね?」
「そ、そうだよ……」
お互い見つめ合う
マリアはお姫様らしいひらひらした服でこの場に合っている。鏡に映る2人が見える、ドレスで向かい合う姿は我ながら様になっているように見えた。
マリアが目を閉じる
それが合図になって口づけをした。
短い時間だが2人が一体となった気がする
「ありがとうマリア、最後にこんな最高の舞台を用意してくれて……」
「私だってマリナが大好きだから……///」
「ありがと、もう、泣いてもいいよね……」
「うん、私ももう我慢できないよぉ……ぅわぁぁ~」
先に泣き始めたマリアを抱擁すると私も涙が溢れだしてきた。
「私、今までで一番輝いてる!全部マリアがいたおかげだよ」
「私もいっぱい教えてもらった! マリナの国の色んなこと、それにこの気持ちもマリナがいないと知らないままだったかもしれない...」
人生で最も輝いた瞬間だった。これからもずっとこの輝きを忘れずに生きていきたい。
「もう時間になるね……」
マリアの体温、表情、やわらかさ、におい、すべて記憶に染み付かせるように抱きしめてキスをした
「ありがとう、あなたと見たあの景色、あなたと一緒に遊んだこと絶対に忘れないから」
「私もだよ!」
ぎゅ~っと抱擁をしてマリアの顔を見たとき12時を告げる時計の鐘の音が聞こえた
最後に見たマリアは今までで最高の笑顔だった
目覚まし時計の音で目が覚めた。
携帯の画面には8月21日と表示されている。
「戻ってきたんだ……」
マリアの顔を思い浮かべるとまた涙が出そうになるが噛み締めて我慢する。
もう泣かない!あの時間は戻ってこないけどあの時間は確かに存在した。
戻ってきたとき一晩しか経っていなかったので夢かと思ったけどあれが夢のはずない、マリアの体温、声、におい全部しっかり覚えてる。
あの時の輝きを持って生きていくと決めた。
「よし今日は友だち誘ってあそびに行こう」
これから色んな人とお話して色んな出会いを経験していく
「お母さん、今から出かけるね!」
異世界のお姫様に恋した10日間
これが夢なのか実際の出来事なのか真相は分からないが麻里奈の記憶にはしっかりと刻まれた。
ひと夏のちょっと不思議な恋の物語 終わり
こちらでもpixiv( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10671538#7 )でもいいですので感想もらえると嬉しいです。