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学園モノの5割は部活動。(2)

ハンターの皆さんとサンダーゲート中学校の人、そして駿先生すみません。

「さぁ!!じゃあ始めようぜ!!」


 俺は勝手に銀髪に顔を向け、勝手に喋る。そして、勝手にボールに足を乗せて勝手にドヤ顔をした。そして勝手に・・・

 え?『勝手に』っていちいちつけると分かり辛い?奇遇だな。俺もそう思ってた。

 ってことで、この2重人格のことは次から『円DO』と呼ぶことにしよう。よろしくな!円DO!!


 円DOとヤンキー軍団は、サッカー場のセンターラインで向かい合っている。ちょうど、キックオフの形だ。普通のサッカーと違う点があるとすれば、付き添いの子供がいないのと、1対10なところぐらいだ。

 ・・え?そりゃぁ無いだろって?いやいや。今世の中の子どもたちはお家に帰ってゲームやってる頃だから。呼ぼうにも呼べなかったんだって。

 ん?ヤンキーたちが自分たちのコートに戻っていく?あいつら、戦う前に勝負を捨てたか!!ふはは!!見ろ!!俺に背を向けて逃げていくぞ・・・。ってああ、もうキックオフだからセンターサークルから出ただけか。


「よーい・・ピーーーー!!!!」


 渋井先生が笛を鳴らした瞬間・・


「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


 雄叫びを上げて円DOがヤンキーたちのコートに突っ込んでいった。おいおい!!そんな真正面から突っ込んだら・・


「させるか、オラァ!!」


 ほら!!すぐに緑髪に行く手を阻まれた!!ダメだ(☆☆☆)!!避けようが無い(☆☆☆☆☆☆☆)!!


 すると円DOの足が素早く動き、異次元ドリブルでボールを操りながら、緑髪の横をすり抜けていった。

 おおーー!!さすが俺の体!!って、あ!!その間に前に5人も!!しかも全員、『こいよ』って感じでニヤっと笑ってやがる!!

 くそっ・・今度こそ無理か(☆☆☆☆☆☆☆)・・・!!


 すると、円DOは突然ピタッと止まった。もちろん、勢い余ってボールが転がる、なんてヘマはしない。足でしっかりボールを抑えながら、円DOは叫んだ。


「くっ。しょうがない・・・!!あれを出すしか無いな・・・。」


 え!?こいつ、何出す気だ!?俺なんにも持ってないぞ!?はっ!いや、ナニは出さないでくれよ!?

 そして、円DOは息を吸って叫んだ。


「くらえっっ!!イワトビペンギン!!」


 何とも言えない空気が、グラウンド中に流れる。俺も含めて、グラウンドに居た人は全員黙り込んだ。

 ・・は?おいおい円DO。何言ってるんだ試合中に、ペンギン?何だそりゃ。ここは水族館じゃなくてサッカー場だぞ?ほら、ヤンキー達も馬鹿を見る目で見てきてるよ?天才の俺を巻き込まないでくれよ。

 ・・・って、ん?なんか地面が盛り上がって・・


 その瞬間。


 ボンボンボンボンボン!!!

『ぴぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!』


 地面から、5体のイワトビペンギンが出てきた。


『・・・な、なにぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!?!?!?!?』


 俺とヤンキー達は、思わず口を合わせて叫んでしまった。あ、もちろん俺は心の中で。

 いや、だって地面からペンギンだぞ?何がどうなればそうなるんだ!?前回から地面の下でずっとスタンバってました、ってか!?それともこの地下には実は水族館でもあるんですか!?地底海底トンネルみたいなの!?いいなぁ〜〜!!行ってみてぇ〜〜〜!!!!!


 いつの間にか、ペンギンは飛び上がって宙を舞っていた。まるで、空気を入れてる途中に口を離された風船みたいだ。てかペンギンって飛べないんじゃないの?

 そんな中、円DOは足をグッと引いて力をためる。そして、


「うぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!」


 叫び声とともに、その足を振り切ってボールを蹴った。ボールは、すごい速さでヤンキー側のゴールに飛んでいく。すると、飛んでいたペンギンたちが急降下して、地面と平行に進むボールと並走し始めた。

 ――って並走するだけかい!!ボールの後ろに突き刺さって更に加速とか、先を走って前にいる相手を蹴散らすとか、色々あるだろ!!それじゃあわざわざ地下世界からペンギン呼んだ意味ないじゃん!!


 ペンギンを連れたボールは、すぐにヤンキー側のゴールの目の前までたどり着いた。しかも、コートのほとんど端から端までを、全く速度を落とさずにだ。もちろん、ディフェンスのヤンキー達はボールを止めようとしない。いや、違う。ボールが早すぎて、必死の形相で横に避けるくらいしか出来ないのだ。

 そしてゴールキーパーの銀髪も必死の形相で・・・って、あれ?あいつ、バンダナなんか巻いてたっけ?


 顔もかなりかっこよくなった銀髪は、真っ直ぐ飛んでくるボールとペンギンと、その先にいる円DOを睨みながら叫んだ。


「よし!!勝負だ鬼DO!!」


 いや、円DOです。と言う間に、銀髪は右手をグ〜〜っと後ろに引いた。そして、ボールとペンギンが目の前まで迫った時、


「うぉぉぉ!!!悪魔の手(デビルズ・ハンド)!!!」


 右手から黒い半透明の霧のようなものが現れ、大きな手の形となってボールとペンギンを受け止めた。


『・・・な、なにぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!?!?!?!?』


 俺とヤンキー達はまた声を合わせて叫んだ。あ、もちろん俺は心の中で。

 こいつ、念能力者だったのか!!しかも放出系の能力者とは!!ちっ!念の中でも特にビジュアルがいい系統を習得しやがって!!いやでも、この年で悪魔の手を出せるなんて・・・よほど非行に走ってきたのね・・・。こんな風に学校に居れるのが奇跡的なくらい・・。だめ。これ以上詮索すると、先生の気持ちになっちゃう・・・。


 俺が母性ならぬ先()を抑えている間にも、悪魔の手(デビルズ・ハンド)とイワトビペンギンの熾烈な戦いは続いていた。銀髪の顔には、必死の表情と大量の汗が張り付いている。対する円DOも、苦しそうな表情でペンギン達を見守っている。ただ、円DOは実際にボールに触っているわけではないので、その姿はまるで競馬場の人だ。自分の賭けた馬が1位と競ってる時の。

 すると、円DOは一声吠えた。


行っけぇぇぇぇぇ(☆☆☆☆☆☆☆☆)ぇぇぇぇぇええええ(☆☆☆☆☆☆☆☆☆)!!!!!!!」


 あ、もうここ競馬場にしか見えなくなってきた。

 その掛け声に後押しされるかのように、ペンギンとボールは回転を増した。悪魔の手(デビルズ・ハンド)がそれに押され、銀髪はジリジリと後ろに下がっていく。すると、銀髪も髪を振り乱し、汗を飛ばしながら叫んだ。


「負けるかぁぁぁぁぁあああああ!!!」


 おおーーー。競ってる競ってる。

 だが、銀髪の掛け声は円DOのように悪魔の手(デビルズ・ハンド)を後押しする力にはならなかった。多分、円DOの掛け声はフラグだったのだろう。ズルじゃないかって?いやいや。不可抗力だからセーフだって。ラッキースケベと同じ。

 フラグのある無しの差は激しく、銀髪が叫んだ直後に勝敗は決した。


 パリィン・・・!!


 何かが割れるような音とともに、悪魔の手(デビルズ・ハンド)が消滅した。目の前の障壁が消えたため、ボールとペンギンは真っ直ぐにゴールへ向かう。そして、


 ズバァァァン!!!!


 漫画のような効果音とともに、ボールがゴールネットに突き刺さった。


「うぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」


 円DOは喜びのあまり、膝をグラウンドに叩き付けて叫んだ。って、痛っ!!痛いわ!!俺の体でもあるんだから、もっと丁寧に扱ってくれよ!!

 銀髪も同じようにゴールからこぼれたボールを見つめ、ゆっくりと膝を付く。俺が、「円DOもその膝の折り方をしてくれればなぁ。」と思っていると、


「ピッ、ピィィィィィ!!!!!」


 渋井先生が、試合終了の笛を鳴らした。

 ・・いや、早い!!早すぎだろ!!まだ試合始まってから5分もたってないぞ!?スプラトゥーンと間違えたか!?だとしたら俺は、回線落ち激しすぎる中でめっちゃ頑張ったイカになるじゃん!!やったぜ!!


 その笛の音に、ヤンキー達は全員言葉を失って地面に崩れ落ちた。だから、なんで諦めるかな。まだ5分も立ってないって!渋井先生に掴みかかって抗議するとか、ボール投げつけるとかバナナの皮投げつけるとかあるだろ!?

 そんな中、円DOだけがスッと立ち上がる。そして何も言わずに、ただグッと手を空へ突き上げた。





【少し後】

「いい・・戦いだったな。」


 グラウンドの横で、銀髪は笑顔でそう言いながら握手を求めてきた。もう円DOで無くなった俺は、「まぁ・・はい。」と曖昧に返事をしながらそれに応じた。

 いや、まあ確かにいい戦いではあったけど、普通もうちょっと頑張ってから言う言葉じゃないかな、それ。俺たち結局5分ぐらいしか競り合ってないぞ――って、そうか。これ、サッカーじゃなくて競馬だったわ。


 手を解いた銀髪は、苦笑しながら渋井先生に顔を向けた。


「ここまでボコボコにされたら、しょうがないですね。いいですよ。こいつをサッカー部に入れることを認めましょう。」

「そうか。よかったな、不良(ふら)。」


 いや、良くないわ!!

 今はまだ俺のフラグのおかげでヤンキーどももキラキラした目で歓迎してくれてるけど、フラグが終わったらまたトイレの時みたいになるだろ!?絶対に嫌だぞ、そんなの。

 あ、そうだ。このさい屋久にもサッカー部に入ってもらおう!!そしたらまたあのボタンで執じぃ呼んでくれるからな!!怖いもんなしだ!!


 ・・あれ?そういえば、こいつら前に100万円で緑髪裏切ったんじゃなかったっけ?


 その時。


「すみませ〜〜ん!!渋井先生〜〜!!」


 校舎の方から声がした。聞き慣れた、少しドスの利いた声だ。

 見ると案の定、屋久がこちらに走ってくるところだった。その姿を見て、ヤンキーたちはハッとして、キラキラした目を止めた。どうやら、嫌な思い出のおかげでフラグが終わったらしい。めんどくさい状況は消えるわ、屋久は来てくれるわ、願ったり叶ったりだ。


 屋久は俺達の近くまで来ると、ヤンキーたちの姿を見てビクッと身を震わせた。


「・・・ひっ!!なななななな、なんで、せ、先輩たちが!?前に、たった100万円で、かか解散、し、したはじゅなににに・・・・!!」


 いや、だからなんでそんなにテンパるかな?お前の見た目、ヤンキー共とあんまり大差ないぞ?

 すると、渋井先生が渋い顔をして屋久の方を向いた。


「なに?あの100万円、お前が渡したのか!どうりで、こいつらにしては大金持ってると思ったよ。」

「え・・・え!?ま、まさか、渋井先生、ヤンキーたちからカツアゲしたんですか!?」

「んなわけ無いだろう!!先生をなんだと思ってるんだ!!!」


 ぐわぁぁぁああああ!!!!耳が、耳がぁぁぁ!!!!目の前でバ○スは流石にやり過ぎでしょ!!いや、グラウンドが崩壊しなかっただけまだましか・・。


 渋井先生は一息ついた後に続けた。


「この前、こいつらがお前たちを襲ったんだろ?HRの後に全員集めて説教した時、不自然にポケットが膨らんでてな。調べたら、全員札束を持ってるんで、びっくりしたんだが・・・そうか屋久、お前のか。なら納得だ。」

「え?屋久なら納得するんですか?」

「ああ。前にこいつの家に家庭訪問したことがあってな。いや、もう、あんな・・・うん、そんなとこだ。」


 お?渋井先生、屋久の家で何を見たんだ?やべぇ、めっちゃ気になる。

 そのうち(☆☆☆☆)遊びに行きたいな(☆☆☆☆☆☆☆☆)


 複雑な顔をしていた渋井先生は、思い出したかのように屋久の方を向いた。


「って、そんな話をしてる場合じゃない。屋久、なんの用だ?」


 あ、そうだ。そういえば屋久がここに来た理由、まだ聞いてなかった。

 屋久は、胸ポケットから一枚の紙を取り出し、渋井先生に渡しながら言った。


「これ、裁縫部の顧問の西保先生からです。大切な話があると。」

「ん?ああそうか。ありがとう。」


 え、裁縫部?なんでそんなところから渋井先生に手紙が?しかも西保先生といえば、学校で一番の美女として有名な先生だぞ?1回すれ違ったことがあるけど、思わず10回くらい振り返っちゃったくらい、綺麗なんだよなぁ・・・。まさに天女みたいなあの人が、どうしてこんな昭和ダンディ俳優に手紙を?


 渋い先生は手紙を眺め、そのうちにどんどん顔を渋くしていった。

 そして、一息ついてから手紙を屋久に戻した。と同時に、屋久に向かって言った。


「わかった。ありがとう、屋久。これからよろしくな。」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いし・・・え?」


 屋久は、10度程頭を下げたところで止まり、あっけに取られて渋井先生を見た。俺も、同じ表情で渋井先生を見た。

『よろしく』?どういうことだ?まさか、渋井先生、屋久とそういう関係になろうとしてるのか!?手紙に、『屋久をよろしくお願いいたします』って書いてあったとか!?やめてくれ!!そしたらこの小説にボーイズラブタグを付けなきゃいけなくなる・・・って何の話だ。


 渋井先生は俺達の顔を見て驚いた。


「ん?屋久、お前まだ伝えられてなかったのか?・・・あ、そうか。だよな。」


 言葉に詰まった渋井先生は、顎で屋久の手にある手紙を指した。どうやら、読めということらしい。先生、『だよな』が不穏すぎるんですが・・・。

 屋久はゆっくりと手紙を見て、それを読み上げた。


「『渋井先生へ。裁縫部に、とてもクレイジーっぽい生徒が入部してきました。私ではハンドに追えなそうなので、ぜひ先生に顧問をチェンジして頂きたいです。おウィッシュします。』・・・・て、」

『ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?』


 思わず、俺と屋久は叫んでしまった。


「え、え!?渋井先生、裁縫部の顧問やるんですか!?」

「まあ、後輩に泣きつかれたら、先輩として答えないわけには行かないよなぁ。」

「いや、でもクレイジーっぽい生徒がいるそうですよ!?大丈夫ですか!?」

「ああ、いや、まあ、それは・・・」


 ん?渋井先生、なんで詰まったんですか?そんなチラチラどこか見てないで、早く教えて下さいよ。

 てか、一体どこ見てるんだ?


 俺は、渋井先生の視線の先に目を向けた。

 そこには、手紙を持ったまま口を開いて立ち尽くす屋久の姿があった。明らかに、ダメージを受けている。

 俺は、とっさに駆け寄って肩を掴み、縦横に揺すった。


「おい!屋久、どうした!!大丈夫か!?」

「・・・クレイジー・・・ははっ。」

「ん?クレイジーな生徒が、どうかしたのか?」

「ははっ。ははははは。」


 俺がいくら呼びかけても、屋久は上の空だ。一体、何があったんだ・・?

 ・・ん?そういえばさっき、渋井先生が屋久に『よろしく』って・・・はっ!まさか!!


「屋久!!お前、まさか裁縫部に入ったのか!?」

「・・・ああ。」


 嘘だろおい!!お前、そのナリで裁縫部に!?びっくりだわ!!ボビー・オロゴンが3分間クッキングやるくらいびっくりだわ!!サイショにタマゴを割るんだよコノヤロー。

 え、でも・・・


「屋久、大丈夫なのか?裁縫部に、クレイジーっぽい生徒がいるみたいだけど・・・あ。」


 そこで俺は気づいた。

 目の前に、見るからにクレイジーっぽい裁縫部の新入部員がいることを。


 あー、まずい。俺、さっきからこいつの前で『クレイジーな生徒』って何度も言っちゃってたぞ。俺だって、目の前で『チコくんって誰だ?』『チコくんって誰だ?』って騒がれたら絶対キレるからな。早くフォローしなくては。えっと、えっと・・・


「あー。そのーー。なんだ。中身は違うから、気にしなくていいと思うぜ。」

「見た目については否定しないのかよ!!」


 そう叫ぶと、屋久はガバッと顔を伏せて泣き始めた。やっぱりまずかったか。いやでも、見た目がクレイジーなのはあまり否定出来ないんだよなぁ・・。

 膝をついて、顔を抑えて泣く屋久。無音で聞くとすごいかわいそうだが、泣き声が

「ゔぉぉぉぉぉぉん!!!!ゔぉぉぉぉぉぉぉん!!!!」

 で、鳴き声だからあんまり感動できない。ごめんな、屋久。お前に感動回は任せられないっぽいわ。


 すると、そんな屋久の姿を見るのに耐えられなくなったのか、渋井先生は苦渋の表情でヤンキーたちの方を向いた。さっき『よろしく』って言ったのは、担任だから屋久の部活を知っていたんだろう。それでも「ゔぉぉぉぉぉぉん!!」には耐えられないのか。あ、関係ないか。

 そして、渋井先生は何食わぬ顔になって衝撃的な一言を放った。


「・・・あ、お前らも裁縫部に移ってもらうぞ。」

『・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!?!?!?!?!?』


 ヤンキーと、俺と、そして顔をガバッと上げた屋久は同時に叫んだ。

 俺が突っ込む間もなく、緑髪が渋井先生に掴みかかった。


「おい!!渋井てめぇ!!」

「あぁん!?『おい!』?」

「あっ。い、いえ、その・・・あのー。渋井先生。なんで、俺・・・あ、僕達まで、そんな、あ、えっと・・・・そのような部活に行かなきゃならねぇんだ!!!」


 いや緑髪、もうちょっと敬語頑張れよ。って、違うか。頑張れないくらい動転してるのか。そりゃそうだよな。俺だっていきなり

「お前、明日から脇役Aな。」

 とか言われたらびっくりするからな。まあ(☆☆)そんなこと絶(☆☆☆☆☆☆)対にない(☆☆☆☆)けど。俺っち主役だし〜〜〜。


 渋井先生もそれはわかっているのか、敬語には突っ込まずに話した。


「お前ら、部活真面目にやってなかっただろ。」

「うっ!?い、いや、そんなこと・・」

「ああ、いい。言い訳なんかしなくてもいいから。もともとお前らをサッカー部に入れたのも、俺がいれば下手な真似はできないだろうと思ったからだしな。」


 へぇ。結構渋井先生考えてるんだなぁ。俺はてっきり漫画にありがちな『たまたま入った部活に苦手な先生』パターンかと思ったよ。


「ってことで、お前らにも俺と一緒に来てもらうぞ。俺が居ないと、お前ら絶対暴れだすからな。」

「ま・・じ、か・・・・渋井だけじゃなく、こいつまで・・・もう駄目だ・・・おしまいだぁ・・・」


 おい!その言葉は王子以外使っちゃけないんだぞ!!せめて髪の毛を黒に染め直して、めっちゃ後ろに立ててから出直してこい!!

 で、『こいつ』って誰だ?渋井先生以外にこいつらが恐れる存在・・・あ。


 俺は、隣りにいるクレイジーっぽい生徒をゆっくりと見た。

 屋久は、目に涙をためながら絶望の表情を浮かべていた。


「そんな・・・嘘だろ・・・」

「おい屋久!ボタン出すなボタン出すな!!まだ何もされてないだろ!!」

「いいえ。やつはとんでもないものに傷をつけました・・・」

「あなたの心です。・・・・じゃなくて!!だったらお前ヤンキーたち捕まえられないことになるだろ!!」

「大丈夫!!捕まえるのはじぃやだからぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」

「おい!!落ち着けって!!!」


 俺と屋久がどったんばったんしている間に、渋井先生は言った。


「よし!確か裁縫部は今日から活動開始だったな!早速行くぞ!ほら歩け!!」

『うぃ〜〜っす・・・』

「返事!!」

『うぃっす!!!!』

「よし、行くぞ!屋久も、ほら!」


 渋井先生が笑顔で屋久を手招きする。そんな中、屋久は捨てられた子犬――もとい捨てられたドーベルマンの目でこちらを見てきた。

 でも、俺にできることは何もない。チワワとかヨークシャテリアだったら死に物狂いで何でもしたかもしんないけど、ヤクザだからなぁ・・・。

 ということで。


「けいれ〜〜〜い!!!」


 俺の敬礼を見て、屋久はまた顔を絶望に染める。そんな屋久を待ちかねた渋井先生が、屋久の襟を掴んで言った。


「ほら、行くぞ!!」


 ずるずると校舎に引きずられていく屋久に、俺は見えなくなるまで敬礼し続けた。


 そして、グラウンドの上には俺一人が残った。俺は、ポツリと言った。


「部活、どうしよ。」




【後日談】

 ヤンキーが消えたことで、サッカー部にはまた部員が戻り、活気ある部活になった。まあ、顧問が西保先生になったから、というのもあるのだろうが。

 逆に裁縫部からは、ヤンキーと屋久以外の部員が全員抜けてサッカー部に入った。恐らく、それまで居た部員は全員西保先生目当てだったのだろう。裁縫部の話は、また後日。


 そして次回。やっと不良が部活を決める!乞うご期待!!



今回出てきたフラグは、ちゃんと全部回収します。

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