学園モノの5割は部活動。(1)
こちら、前半になりま〜す。
「おい不良!!ちょっといいか!!」
いつものホームルームの後、バ○ス級の渋い大声が教室中に響き渡った。と同時に、クラスメイトが全員ビクッとなる。そりゃそうだ。バ○ス食らってなんともないやつなんて、将軍クラスだよ。むしろ、目が潰れなかっただけありがたいと思わなきゃ。
・・と、俺が現実逃避している間に渋井先生は俺の目の前に立っていた。ヤバい。目がガチだ。一歩でも動いたら殺される。・・いや、でも俺なんかやったか?せいぜい、宿題を3日連続で提出し忘れたり、授業中に居眠りしたり、夜の8時くらいまで学校に残って馬鹿騒ぎしてたくらいだぞ?
俺が考えている間に、渋井先生は口を開いた。
「不良!!お前、まだ部活決めてないな!!」
「・・・はい!決めてないですすみません!!!」
「あ、いや。土下座されるようなことじゃないんだが・・・」
渋井先生は俺のスライディングDO☆GE☆ZAを見ると、突然ワタワタし始めた。ふっ、さすが大人はDO☆GE☆ZAの重要性をわかってるな。あのヤンキー共とは大違いだ。
・・えっ?全然反省してるように見えないって?いやいや。もちろん悪いと思ってるぞ。1週間前が期日だったのに、今日まで完璧に無視してたからな。物を提出しないのは、とてつもなく悪いことだ。・・あっ、宿題は例外な!俺は「出してない」んじゃなくて「忘れてる」だけだから。故意じゃないから。ふふっ。故・意・じゃ、ないから。
・・さて。部活動を決めていないことについてだが、もちろんそれにはちゃんとした理由がある。それは・・・
「おい不良。別に怒ってないから、とりあえず読者の皆さんに話しかけるのやめてくれ。」
「おっと。渋井先生に注意されてしまった。さっきから読者の方を向いているのを、不思議に思ったんだろう。失敬失敬。」
「俺にも聞こえるように話しかけろ、って意味じゃないからな。」
渋井先生は一息「はぁ〜」と吐いた後、頭を掻きながら俺に言った。
「実はな、お前にサッカー部に入ってほしいんだ。」
「・・え?」
俺は思わず耳を疑った。まだ『遅刻部』とか『宿題サボり部』とかだったら納得したかもしれない。俺の得意分野だからな。でも、サッカー部?先生の前でスポーツをやったことは・・いや、ない。体育の授業で大活躍したことも・・ないな。じゃあ、なんで先生は俺に声かけたんだ?
すると俺の不思議そうな顔に気づいた渋井先生が、渋い顔で言った。
「もちろん、お前の運動能力を見込んで誘ってるわけじゃない。お前以上のやつなら、死ぬほどいるからな。そうじゃなくて、単純に部員数が足りないんだ。」
いやいや先生。『もちろん』なんて失礼な!!俺の運動能力は中の上、いや中の中か・・中の下?・・下の・・まあ、そこそこだぞ?って、問題はそこじゃない。
「部員数が足りない?ホントですか?サッカー部ですよね?全国の高校の中で一番部員数が多い部活ですよね?」
「そんなことよく知ってるな・・」
渋井先生は顔をさらに渋くして言った。
「・・実は、今年から入ったある部員達が問題児でな・・。そいつら以外の部員がなぜか全員辞めちまったんだ。多分、俺が居ない間に部員を脅してたんだろうが、証拠が掴めないから退部にも出来ない。しかも悪いことに、その問題児達が全部で10人でな・・。これじゃあ試合に出れないってことで、学年で唯一部活に入っていないお前を誘ったってわけだ。」
そこまで言ってから、渋井先生はまた顔を渋くした。これでさっきのと合わせて3回だ。渋い渋い渋い顔だな。渋すぎて、梅干し食った人みたいになってる。
・・そっかー。問題児かー。そりゃ部員も逃げるわな。で、頼れるのが俺しか居なかった、と。まあ、どこの部活に入っても同じことだから、別にいっか。
でも、問題児かー。やだなぁ、上手くやれるかな・・。てか、問題児ってどんなもんなんだろう。俺問題児に会ったことないから、分かんない・・あ、いや、つい最近会ったことあるわ。まあ、でも。
「問題児って言っても、流石に僕と屋久を襲ったヤンキー共ほどじゃないですよね。」
その瞬間。渋井先生の顔が渋い渋い渋い渋い渋い渋い渋い顔になった。梅干しで例えるなら、パックごと飲み込んだ感じの顔だ。
あ、これは、まさか・・
【少し後 グラウンド】
「おいてめぇ!!なに勝手に入ってきてんだ?このグラウンドは俺たちマクロガンゲッターイデ28団の、テリトリーだぞオラァ!!・・て、あぁ!?てめぇはあの時の!!」
「おい。何調子に乗っているんだ?」
「あ、あっ!し、渋井先生!!い、いえ。ちょっと、僕、ツンデレなんで。こういう挨拶しかできないんですよ。」
「ふぅ〜ん。これが最近流行りのツンデレってやつなのか。」
そう言って渋井先生は、銀髪ヤンキーに向けていた拳をおろした。
いや。おい銀髪!!お前のどこがツンデレなんだよ!!ツンツンしてんのは髪型だけだろ!!それにデレどこ行った!?可愛くないツンデレは需要ないから!!で、渋井先生もチョロすぎでしょ!!2次エロだとツンデレは3大萌属性の一つだぞ!?もっとエロマンガ見ろ!!
そこまで突っ込んでから、俺は改めてグラウンドを見渡した。赤いコーンが規則正しく並ぶ中を、緑や青の髪の毛の奴らがボールを操りながらジグザク歩行を繰り返している。間違いない。この前俺たちを襲ってきたヤンキーたちだ。
・・それにしても、以外に真面目そうだな。てっきり、世紀末をイメージしてたんだが
・・ん?あの赤モヒカン、なんかポケットに入って・・あ!あいつ、ジャンプ持ってやがる!まさか、ジャンプ系サッカー少年を目指してるのか!?止めとけ止めとけ!せいぜい一話のボスにしかなれないから!
俺が赤モヒカンに気を取られてると、横から「はぁ!?」と叫び声が聞こえた。見ると、銀髪が信じられない物を見るように渋井先生を見ていた。
「『はぁ!?』は無いだろう?それが先生に対する態度か?」
「あ、はい。えっと、えーーー!?それ、本気ですか!?」
「ああ。しょうがないだろ?まだ部活に入ってなかったのが、不良しかいなかったんだよ。」
「チッ・・あ、いや、本気ですか・・。」
銀髪はそう言ってから、しばらく頭を抱えてうつむいた。ボソボソと、
「くそっ・・」「どうすればこいつを・・・」「殺っちまうか・・」
と聞こえてくる。いや、止めて!俺も好きで入ったわけじゃないから!!てかそれで殺されたら、渋井先生が間接的だけど殺人犯になっちゃうじゃん!!
すると、急に銀髪が顔を上げた。浮かべたのは、とてもいい笑顔。もちろん、裏通りでサラリーマン蹴り殺してそうな悪い笑顔だが。
「先生!!こいつ、運動能力はどうですか!?」
「ん?ああ、大体中の中・・中の下・・いや下の・・まあ、そんなとこだ。」
「じゃあせめて、一回体力テストしてやっていいですか?俺たちもこいつがどれくらい使えるのか、見てみたいですし!」
「ん。まあ、いいんじゃないか。それくらいなら。」
渋井先生が頷くと、銀髪の笑顔は更に無邪気なものになった。
いや、先生!!ちょっとは空気読もうよ!!こいつら、どう見たって俺をリンチする気満々じゃん!!体力テストとか言って、めっちゃきついことやらせる気でしょ!!やめて!!乱暴にしないで!!
俺が「待って!」と声をかけようとすると、銀髪が俺の方を向いて口を抑えてきた。そして、息をしようともがく俺に、満面の笑みのまま言った。
「もう二度と俺らの前に現れないように、ボコボコにしてやんよ。」
あ、まずい。
これは、『主人公が挑発に耐え続け、何かの拍子に怒りを爆発させるフラグ』に引っかかってる!!くそっ、こいつらどんだけフラグを作れば気が済むんだ!!トイレのときみたいに、勝手に挑発に乗るなよ!!ぜっっっったいに乗るなよ!!!
すると、俺の手は勝手に動き銀髪の腕をグッと掴んだ。この野郎!!空気読みやがって!!銀髪は一瞬ビクッとしたが、すぐに顔から笑みを消して俺を真っ直ぐに睨みつけた。目の凄みがヤバい。もうダメだ。おしまいだぁ。
そんな俺の心に構わず、俺の口は勝手に動いた。
「おい、先輩・・・」
やめろ!!それ以上を先を言うな!!今は屋久がいないから、執じぃも助けに来てくれないんだぞ!!
もちろん俺の口は、そんなこと気にせずに開く。そして言い放った。
「それなら証明してやるぜ!!俺の強さを!!」
目の前の銀髪がぽかんとした目で俺を見ている。いや、ぽかんとしたいのは俺の方だよ!!
これは・・・どういうことだ?いや、確かに挑発に乗りはしたけど、トイレの時はこんな体育会系じゃなかったぞ?なにか、トイレと違う点は・・・ん?トイレ・・・
そうか!!あの時と違うのは、『場所』だ!!あの時はトイレだったけど、ここはグラウンド。だから、同じ挑発でも発生するフラグは違う。
確かグラウンドで挑発されると出るのは・・・
「さあ!!サッカーしようぜ!!」
「・・は、はぁ!?」
いつの間にかバンダナを巻いた俺は、勝手に焦る銀髪の腕を掴み、勝手にサッカーコートへ向かっていった。
そう。これは『サッカー少年フラグ』だ。
アタタタの人、すみません。アタタタの知識は付け焼き刃です。
後半はゴッドなハンドとかペンギンとかに謝ります。