えろほん が あらわれた!
ちなみに妹の名前は『律』です。
注)欲がむき出しの回です。清廉潔白な方は見ないほうがいいかも
「ただいまーー!!!アーンドおかえりーーー!!・・・あ。」
ドアを開けると、玄関には口が「お」の形で止まっているお母さんがいた。たぶん、「おかえり」って言おうとしてたんだろう。ざ〜ん〜ね〜ん〜!!俺のほうが先でした〜〜!!
すると母親は、チッと舌打ちして俺を睨みつけた。すみません調子乗りましたすみません。
・・あれ?お母さんなんか不機嫌じゃない・・?
「ったく・・・あんた何で私がおかえり言う前にセルフお帰りするのよ。たまには私にもおかえり言わせてよ。そしたら私が『あ、今母親みたいなことしてるから、今日はもうこれ以上母親しなくていいや』って思えるのよ。もうこれ以上私に仕事させないでよ。」
「お母さん。母親って仕事なの?」
「あんたの母親やるのが嫌だっつってんのよ!!」
あ、これはまずい。
うちの母親が「母親、嫌だ」発言するのは、決まって俺か妹が悪いことをした時だ。の◯太くんのお母さんが0点のテストを見つけると、決まって「の〜◯〜太〜!!!」って言うのと同じ。二人共もっと落ち着こうぜ。人間焦ってたら何もうまくいかないのに・・。
てか、俺何かやったか?
まだテストは一つも受けてないから、の◯太コースじゃないのは決まってる。でも、それ以外に俺が怒られる理由が見当たらない。なんてったっ清廉潔白な人間だからね!俺は!
ってことは・・・
「なるほど・・・妹が何かやらかしたんだね?」
「・・・へぇ・・なら、これは律のってことなのね!!!」
バシィ!!
お母さんは、思いっきり何かを床に打ち付けた。なんか、床に当たった音からすると本みたいだけど・・
って!これは!!!
Fカップ女優表紙のエロ本!!!
え、何でこれが見つかったんだ!?ちゃんと、ソファの下に隠しておいたのに!!
エロ本とソファを交互に見つめる俺に、お母さんはフッと笑いながら言った。
「残念ね。こちとら、たまにはソファの下まで隅々掃除しようとか思う時もあるのよ。私だってたまには、というかいつでも頑張ってんのよ!!」
「・・っ!!」
くそっミスった!
お母さんは掃除をルンバとか言うオセロのコマみたいなやつに任せっきりにしている。だから、ルンバの入り込むスキのないソファの下は、俺の絶対領域のはずなのに!!
・・あ!お母さんの後ろにルンバが!!・・って、あれ?あそこにあるルンバ、なんか、止まってる?ってことは・・
「お母さん。まさか、ルンバが壊れたから自力で掃除したの?仕方なく?」
「ちっ、違うわよ!!わ、わ、私はちゃちゃちゃんと!!じ、自分から、自動的に、能動的に掃除し始めたのよ!!」
「うん。典型的なキョドりありがとう。」
やっぱりね。お母さん、サボれることは徹底的にサボる主義だもんね・・
てことは、諸悪の根源はてめぇか!ルンバ!
ちぃ・・・よくも止まってくれやがったな!!家電の白い悪魔め!!
俺がルンバを呪っていると、突然お母さんがガシッと肩を掴んできた。って痛い!なんか掴んでるところがギリギリいってるんですけど!?
お母さんは俺の耳に吐息が当たるくらい顔を近づけた。あぁ・・ゾクゾクするぅ・・でなくて。
「さ。そろそろ正直に言いなさい。『これは僕のエロ本です。迷惑かけてすみません。なんでもしますから許してください。』って。」
「いや、なんでもするわけじゃないけど・・・」
「あんた今、なんでもするって言ったわね!?」
「打ち消しの『じゃない』を勝手に消すな!!」
っとあぶねぇ!危うくあっちのペースに流されるところだった!
俺は、こうした会話の中でうっかりフラグを作ってしまうことが多々ある。というか、お母さんそれを狙ってるな・・・そうはいくか!!
絶対にしゃべらないぞ!!
すると、お母さんがエロ本をパラパラとめくりながら聞いてきた。
「ところで具辰。2ページのグラビア、あんたの好みどストライクだったんじゃない?」
「そうそう!この手ブラがいいんだよ!アウトに見えてギリアウトじゃない、この隠せてるのか隠せてないのかよくわからない感じ!そしてこの顔!顔を伏せて恥ずかしげな素振りを見せながらも、視線はこちらを向いてまるで『どう?』と問いかけてるみたいで!しかもしゃがんでて下半身がよく見えないってのも、好奇心をくすぐって、すごくいい!!いやぁ〜まさかお母さんにもこれがわかるとはね〜!!」
「いや。あんたの言ってることはよくわかんないけど、とりあえずこれがあんたのだってのはよーく分かったわ。」
「・・・・しまっっっっっっったぁぁぁぁぁ!!!!!!」
俺はおもわず膝を折った。お母さん、誘導尋問はなしだよ!聞かれたら語らずにはいられないじゃないか!!この美しさ!!
お母さんはふぅ〜っと大きなため息をついた。
「さ。もう茶番はいいからさっさと白状しなさい。『なんでもします』って。」
「いや、白状するのそこじゃないんだけど。てか、そこまでして言わせたいってことは、お母さんなんか俺にやってほしいことでもあるの?」
「決まってるじゃない!!ルンバが治るまでの間、家の掃除をやってもらうのよ!」
「要求が地味!!」
お母さん。あんた、『なんでもします』をナメてるぜ。何でもなら、アンナことやコンナことを(ゲフンゲフン)。
ん〜まあでも、ただの掃除なら許容範囲かな?ここは正直に白状・・・
そのとき、
ガチャガチャ・・・ギィ・・・
「ただいまー!!・・・あれ?お兄ちゃんまたなんかやったの?」
玄関のドアを開け、妹が帰ってきた。
てか妹!『また』ってなんだ『また』って!!お兄ちゃんそんなにいつも怒られてるわけじゃないぞ!せいぜい週4くらいだぞ!!
キョトンとする妹に、お母さんが優しく話しかけた。
「律。世の中には、知っていいことと悪いことがあるのよ。今、とっても知っちゃ悪いことについて話してるから、とりあえずあっちに・・・」
「あれ?お母さんなんの本持ってるの?えーっと・・・F・・カップ?」
『!!!』
俺とお母さんは思わず目を見合わせた。どうやらお母さんも俺と同じ気持ちのようだ。
やばい!!
これは、家族3大気まずい案件の一つ、『家族でTV見てたら突然ラブシーンが流れる』の派生系!!なんとも言えない空気になること必須の、超気まずいシーン!
おいおいおい、どうすんだ?これ!?
俺達が黙ったままでいると、妹は教えてくれないことを悟ったのか、諦めたような顔をした。ふぅ。物分りの良い妹で助かった・・・お礼に後で俺の投げキッスをあげよう。
だが、俺は甘かった。
妹は、急ににこやかになって口を開いた。
「まあ、私はEカップが好きなんだけどね。」
・・・え?・・は?
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?
え、何妹!?なにさらりと爆弾発言してんの!?E?Fと一つ違いじゃん!なに?Fのほうが大きいのに!?Fに恨みでもあんの!?FよりEの方が画数多いから、とか!?でもFって『不良』の『F』だから、わかりやすくていいぞ!?
お母さんも相当ショックなようで、フラフラとよろめいている。
「り、律・・・あんた、相当将来に期待してんのね・・・」
「将来・・?ああ、うん!これから段々レベルが上ってくといいよね!!」
そりゃそうだ!上がるに決まってんだろ!一生その断崖絶壁のままだったら、お兄ちゃん悲しいよ!お母さんだってCだし、ある程度遺伝するでしょ!!
ん?妹が疑問を顔に浮かべてる・・・なんか、嫌な予感・・・
「でも、なんでEなのかな?普通、IかTだと思うんだけど・・」
『・・・はぁ!?』
ちょっ、ちょっ!?妹!?『普通はIかT』って、え!?お前なに?実は裏でコソコソエロマンガ見てて、もう見すぎて現実世界とエロワールドの違いがつかなくなってるとか!?巨乳絶対正義教の狂信者になっちゃったのか!おっぱいはいかなるおっぱいでも偉大だと、アインシュエロインが証明済みなのを知らないのか!?
「り、り、り、律・・・世の中には、あんたくらいの年端もいかない女の子をペロペロしたい人だっているから、そんなに、あの、期待しなくて、いいのよ?ほ、ほら!そんな大っきいと日常生活に支障をきたすわよ!だから、ね?」
うわ。こんな焦ったお母さん初めて見た。そんなに娘に越されるのが嫌なの!?てか、サラリとエグいこと言わなかった!?
妹はそんなお母さんを不思議そうな目で見つめた。
「・・え?お母さん。それ、何の話?」
・・・ん?話が通じていない?
・・じゃあ、妹なんのことを話してたんだ?
「おい妹よ。お前、今まで何について話してたんだ?」
「え?いや、カップと言ったら決まってるでしょ。」
「天皇杯についてだよ。」
「Emperor's Cupかよ!!」
俺は妹に強烈なツッコミを入れた。もちろん「なんでやねん!!」の効果音付きだ。
「ぐっ・・ちょっとお兄ちゃん!!痛いよ!!」
「これが突っ込まずにいられるか!!なんで天皇杯なんだよ!!確かにカップて杯だけども!!ていうか何で英語!?」
「だって今日の授業で習ったんだもん!!ちなみに、imperialeは『皇帝の』、tennnouは『天皇』って意味だよ。知ってた?」
「へぇ〜。そうなん・・・し、知ってるに決まってんだろ!?お兄ちゃんを何だと思ってんの!!てかdennnouは絶対煽ってるだろ!!俺がローマ字もわかんないと思ってたのか!?」
「お兄ちゃん。それじゃ『テンノウ』じゃなくて『デンノウ』だよ・・・」
「・・細かいこたぁどーでもいい!!」
すると、俺達のやり取りを見ていたお母さんがふぅ〜っとため息を付いた。
「まったく・・驚かせてくれたわね・・・。律。とりあえず、ランドセルとか片付けてきなさい。」
「はーい」
妹はそう元気よく返事すると、パッと靴を脱いで家に上がった。
と思ったら、お母さんの横を通った直後に止まった。
「ん?どうした?妹。」
「・・・あれ・・」
そういって妹が指差したのは、止まっているルンバだった。
「ああ、あれか。あのルンバ、なんかいきなり壊れたんだってさ。全く・・そのせいで俺達が掃除しなくちゃいけなくなったよ・・あれ?妹?」
妹は、ルンバを見つめながらピタリと止まっていた。それどころか、額からだらだらと汗を垂らしている。
全く妹よ・・可愛い顔が台無しだぞ?それじゃあまるで、犯行をバラされた犯人みたいじゃないか・・・
ん?犯行をバラされた・・・あ!
「おい!まさか妹・・」
「すみません。私が壊しました。」
俺が妹に叫ぶのと、妹がお母さんにDO☆ZE☆ZAしたのは、ほぼ同時だった。
「今日の朝、スキップの練習してたらたまたま当たっちゃって・・・直そうとして叩いたんだけど、余計ひどくなって・・・で・・」
「ちょっ、律!?今、サラリと聞き捨てならないこと言ったわね。『叩いた』!?なんでそんなことしたの!」
「それは・・・」
ん?妹よ。なんでこっちをチラチラ見てくるんだ?
いやまあ確かに、お前がルンバを壊したせいで俺のエロ本が見つかったわけだが、わざとじゃないらしいし、怒ってないぜ。
「いいよ。遠慮しないで。言っちゃいな。」
「う、ん。わかった。」
俺の言葉に背中を押されたのか、妹はしっかり、はっきりと言った。
「お兄ちゃんが『機械なんて叩けば直る』って昔言ってたから、その通りにしてみたんだ。」
・・・え。何言ってるんだ妹!?俺、そんなこと言って!!・・たね、うん・・・
・・・・・・
「あんたかぁぁぁ!!!!」
「痛い痛い痛い!!」
お母さん!ヘッドロックかけないで!!しかもかなり本気でしょ!?やめて死んじゃう!!ギブ、ギブだから!もう10カウント取ってるから!!
お母さんは、俺がマジで死ぬ5秒前に腕を解いた。ふ〜・・・三途の川見えかかったよ・・
しかし、はぁ〜。結局俺の自業自得か・・・
「俺が『叩いて直る』なんて言わなければ、エロ本見つからなかったのにな・・・失敗した・・」
「・・あ”?あんた、今なんつった?」
「え?いや、エロ本見つからなかったのにな、って・・・あ。」
お母さんが、憤怒の表情でこちらを見てきた。
【少し後】
「ほら!!もっとよく拭きなさいよ!!ルンバならそこあと10往復はするわよ!!」
『は、はぃ〜〜〜』
俺と妹は、ルンバの代わりをやっていた。
そう、ただ掃除するのではなく、ルンバの動きと同じように掃除をするのだ。これが、予想以上にとても疲れる。
くそっ、ルンバのヤロー!!なんで同じとこ何度も往復してんだよ!ちゃちゃっと拭いて終わりにすればいいだろ!頭悪いなぁ・・・
「あ、ところであんたたち。」
お母さんが、PS4を出しながら言った。
「ルンバって、自分で充電しに行くわよね。」
「うん。・・・うん?え!!ちょっと待って!!それどういう意味!?」
「うーん。言い換えると・・ルンバって、自分でご飯食べるわよね。」
「は!?まさか俺たちにもそうしろって!?」
「だってあなた達はルンバでしょ!?ご飯くらい、たまには自分で作りなさいよ!!」
「俺たちルンバじゃないんだけど!!」
・・ちっ。遅かったか。
俺が叫んだときには、お母さんはもうイアホンを耳につけていた。たった1行分の会話でよくもまぁ!!この速さ、俺がテストを後ろ手に隠す速さよりも早いな!!やりおる。
「・・お兄ちゃん。お腹すいた。」
「ああ。俺もだよ、妹。」
そして、2人でお母さんを潤んだ瞳で見つめたが・・・
カチカチカチカチ・・・
「・・・あ!!隠れゴール見っけ!!ラッキー!!」
こちらを振り向きもしなかった。全く・・お腹をすかせた子供をほったらかしにして、しかもゲームまでやるなんて・・・。児童虐待って言うんだぜ?そういうの。マスコミ呼んできてドラマにしてもらおうか。『ルンバの白さは悲劇の始まり』ってタイトルで。・・ダサいか。
「はぁ・・仕方ない。作るか。」
「お兄ちゃん、手伝おうか?私、そばとそうめんとうどんのブレンドの黄金比率知ってるよ。」
「そんなものいつ使うってんだ・・妹・・」
いやまあ確かにどれも麺類だけど、なんでも混ぜりゃいいってもんじゃないんだわ。それに、今そばがないから、作れないよ。はい残念。
「大丈夫大丈夫。」
「お兄ちゃんがちゃちゃっと美味しく作っちゃうから。」
【2時間後】
「お待たせしました。」
俺は、フォークとナイフを持ったまま、腹を鳴らして机に突っ伏している妹の前に、コトリと皿を置いた。
その音に妹は飛び起き、嬉々とした表情で目の前の料理を見、そして一気に絶望の表情になった。
そこに置かれていたのは、もはやなんの料理かわからない黒焦げの物体だった。
俺は、妹を安心させるために語りかけた。
「この料理は一見黒焦げに見えますが、実は、ただの黒焦げではありません。この世界にまたとない、最高級の黒焦げです。まあとにかく食べてみて下さい。涙がでるほど美味しいですよ。」
妹は、無言で物体を口に運んだ。
無表情でもぐもぐしないで・・怖いから・・巨人だって人食う時いい笑顔なのに・・・
・・えっ?涙!?まさか、俺の料理そんなに美味しかったのか?嬉しいなぁ・・・料理人やっててよかった・・・
「お兄ちゃん・・・」
「なんだ?妹よ。感謝の言葉か?いいぞぉ!存分に感謝したまえ妹よ!!この素晴らしい・・・」
ん?妹、なにおおきく振りかぶって・・・・
「食えるかぁ!!!」
ズンッ!!
「ぐふぅ!!!」
妹の、超大型巨人もびっくりの強烈な一撃で、俺の意識の壁は一瞬にして吹き飛ばされた。
思った以上にクソ回になりましたw
欲がむき出しに・・・w