ある日空にニキビができました。
今日、夜空を見上げたら月がでかくてびっくりした。
それだけで出来た作品。
青い空に浮かぶ、ぷくっとした桃色の粒。
それは夜明けと共に唐突に現れました。
ほくろでもイボでもなく、それは確かにニキビでした。
太陽の近くに常に現れ、見るものを不快にさせるそのデキモノを、世界中の人々が目にしました。
綺麗な景色を見ていても、方角が悪ければ、常に空に浮かぶニキビを視界に入れなくてはいけません。
観光名所の写真はニキビを避けて撮るしかありませんでした。
ニキビは常に空に浮いていました。
太陽と同じ軌道を描き、世界中どこからも見えました。
人々は不快になり、常に下を見て歩くようになりました。太陽が去ってからようやく、空を見上げ、あらためて夜空の綺麗さに感動します。
ニキビが空にできて、3日立ちました。
各国首脳が集まって、真剣に空のニキビをどうするか話し合いました。
潰してしまえ、という過激派。治そう、という穏健派。自然に治るだろうという、無責任派。
そんな中、日本の学者が恐ろしい説を発表しました。空のニキビを潰した場合、その膿が重力に引かれて、地球に落ちると。
海に落ちたら、汚染が世界中に広がるので、どこかの大地を犠牲にするしかないと、結論が出ました。
核弾頭を使って、軌道上のどのタイミングで落とすか、真剣に議論しますが、無情にも時間が過ぎるだけ。
そうなれば、自然に治るという、無責任派の思うツボ。
時間をかける政府に、人々は怒りをつのらせます。
そのため各地でデモや内紛が起きました。
時には、犠牲になる大地を巡って戦争も起きかけました。
そんなある日、パチンという音と共にニキビがつぶれました。
どこかの国が潰したわけではなく、自然に、それは弾けました。
どれだけの被害が地球を襲うか、人々は恐怖しました。
けれど、空からニキビが消えただけで、それ以外何も起きませんでした。
人々は久々に清々とした顔で空を見上げました。
空の綺麗さに気づき、上を向いて歩く人が増えました。
世界は平和に一歩近づきました。
そんなある日地上に鼻毛が生えました。
人々は目が離せませんでした。