伝染性悪魔
ここはどこにでもある平平凡凡な中学校。
どこにでもありそうなこの学校には、そう簡単にはお目にかかれない希少な生徒がいた。
「テスト返却するぞー、市村ー」
「はい」
市村と呼ばれたこの生徒、彼がその希少な生徒となのである。
「今回も満点だ、さすがだな!」
「いえ、そんなことどうってことありませんよ」
「そうか?今回のテストは結構難しく作ったんだけどな!」
教師は威勢よくがははと笑うとそのまま答案用紙を市村に手渡した。
眼鏡をくいっと上げた市村はにやりと笑った。
「幸いなことに、僕の頭の中には僕とは別な悪魔が住んでいるんですよ。その悪魔が問題を代わりに解いてくれるんです」
教師は思わず耳を疑った。
この年頃になるとちょっとアイタタターな発言が増えるものだが、この生徒のなんとレベルの高いことか!
しかも自分とは別の悪魔と言っているあたり、自分のことも悪魔だと思っている節がある。
「そ、そうか!市村も大変だな!」
悩んだ教師は結果的にごく普通の返事しかできなかった。
その返事が市村には気に入らなかったらしく、眉根にしわを寄せた。
「先生、さては僕の言うことを信じてませんね?」
「え?い、いやあ…」
教師として、ここは生徒の言うことを信じるのが正しいのか、年上として人生の先輩として、数年後布団をゴロゴロしたくなるような発言は控えた方が後々のためだと言うのが正しいのか、彼は今人生の分岐路に立たされていた。
「…じゃあ、先生に特別にお見せしますよ。僕の頭の中の悪魔を」
そう言うなり市村はおもむろに前髪をかきあげて見せた。
「え?う、うわああああああ!」
その後、その教師が何を見たのか語ることはなかったが、彼はことあるごとにこう語ったという。
「俺の頭には悪魔が住んでるんですよ、だから困ったことがあってもすぐ悪魔が正解を教えてくれるんです」
最後に先生に感染させることでプチっとホラーっぽく見えるように書きました。