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choice01  作者: 陽芹 孝介
第七章 分解……分離……解放
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……七日目…午前九時……


久しぶりに安眠できた感じが、体の疲れを確かに癒してくれた。

太陽がないこの島でも朝の光がある…そんな光を感じて目覚めた美夢は、葵の方を見た。

「まだ寝てる……でも気持ち良さそう…」

美夢の言うように葵は実に、快適に寝ている……何かに開放されたように…熟睡している。

「もう少し………寝かしとくか……」

そう言うと美夢は、顔を洗うべく洗面所に向かい、朝のメイクなどの支度を済ませた。

そして自分が飲むアイスティーと、葵の好きなアイスカフェラテを用意した。

「そろそろかな……」

美夢がそう呟くと、葵がベッドからノソノソ起きてきた。

美夢が葵に言った。

「おはよっ……」

寝ぼけ眼の葵も美夢に言った。

「おはよう………何時だ?」

「もう9時30分だよ。はいっ……」

そう言うと美夢は葵にアイスカフェラテを渡した。葵はそれを受けとると、一口飲んだ。

「……美味いな……」

一口飲んだ葵に美夢は言った。

「さっ、顔……洗ってきなっ…」

美夢言われた葵は洗面所へ向かった。幼馴染みの日常だ。

顔を洗い、洗面所から戻った葵は再びアイスカフェラテをのみ始めた。

美夢が言った。

「ねぇ……いつ帰れるの?…」

葵は言った。

「たぶん……今日かな……」

美夢は驚いた。

「葵っ!あんた、帰りかたわかったの?…」

「たぶん……でも歩さんに確認しないとな…」

「歩さん……昨日辛そうだった。大丈夫かな?」

「大丈夫……歩さんは強い。さぁパーティールームに行こう……皆も、もう行ってるだろう……」

二人はパーティールームに向かった。

太陽がない島だったが……久々に爽やかな朝を、確かに美夢には実感できた。

パーティールームに到着すると、皆揃っていた。

九条が葵と美夢に言った。

「おはよう……眠れたかい?」

葵が答えた。

「ええ……久しぶりに熟睡しました。皆さんは?」

有紀が言った。

「私はいつも通り、適度な睡眠だ…手紙だった歩はあまり眠れなかったようだが……眠れと言ったのに、まったく…」

歩が言った。

「仕方ないだろ………俺にだって、考える事があるんだよ」

九条が言った。

「まぁまぁ、片岡さん……」

歩の昨日の話を聞いて、歩の心情を察した九条がフォローした。

容子が葵と美夢に言った。

「おはよう二人とも……朝ごはん用意するねっ……トーストでいいかな?」

美夢が言った。

「容子さん……私も手伝いますよ」

そう言うと、二人は仲良く厨房へ行った。

二人が厨房へ向かったのを確認し、九条が葵に言った。

「人数も半分になってしまったね」

「ええ……初日が嘘のようです」

九条は少し遠慮がちに言った。

「葵君……聞いていいかな?」

「どうしました?」

「堂島夫婦と山村さん、それに順平君だが……君なら彼らを死なせずに救えたんじゃないか?」

葵は少し考えて言った。

「確かに三人は難しかったですが……順平君を救う事は、できました」

九条は怪訝な表情で言った。

「では……何故?」

「殺人の記憶を持ったまま現実に戻ったら……彼は、一生その自責に捕らわれ……下手すれば自殺しかねない……」

「それってどういう意味だい?」

葵は髪をクルクル回しながら言った。

「海外でこんな事例がありました……映画館の一室で、その部屋にいたおよそ30人が…突然昏睡状態になり……」

九条が目を見開いて言った。

「それって……」

葵は続けた。

「だがしかし……一ヶ月後、突然全員目を覚ましたそうです」

いつの間にか歩と有紀も聞き入っている。

葵は続けた。

「目を覚ました30人は『スクリーンから放たれた白い光に包まれた』ところまでしか、覚えていなかったそうです……」

葵はさらに続けた。

「僕はあのアマツカという人物と、対峙した時思いました……海外の今言った事例……いやそれ以外の集団昏睡事件も、アマツカによるものではないかと……」

有紀が言った。

「原因不明の集団昏睡は国内外問わず、事例がある……事件性はないようだが……」

葵が言った。

「そこで僕は、仮説をまたもや立てました…」

歩が言った。

「仮説とは?」

「ここで死んだ人間は……現実世界に戻ると、その間の記憶が無くなるんじゃないかと……」

九条が言った。

「て、事は……アマツカは……その30人を全員殺害したのか!?」

「アマツカは言いました…『来るべき時の資金稼ぎ』と……だとすれば、様々なパターンのゲームを、『アマツカのユーザー』達に提供していると思れます……」

歩が言った。

「だから……あえて順平君を死なせた……彼の……未来を守るために……」

葵は言った。

「それは買いかぶり過ぎです。彼から殺人の記憶を消したかったのは事実ですが、彼の未来まで保証はできません…」

有紀が言った。

「いや、お前は守ったさ……順平の未来を…」

九条が言った。

「そうだね……無事に帰っても、彼を殺人罪で立件できないからね……これで良かったのかもしれない……」

歩が言った。

「殺された人も……ここでの記憶が消えてしまう。でも……生き残った俺たちは鮮明に記憶に残ってるんだろな…」

九条が言った。

「しかし、何故記憶が消えて無くなるんだろうか?…」

葵が言った。

「この島で僕たちが動けるのは、脳波のおかげです手紙だった…つまりこの島で殺されるという事は、脳波に危害を与えた事になり…」

有紀が言った。

外傷性健忘(がいしょうせいけんぼう)か……」

歩が言った。

「頭部の外傷がきっかけで、一時的な記憶喪失を起こす症状か……」

葵が言った。

「それと似たような事でしょう……」

九条が言った。

「なるほどね……とにかく脱出しなければ、わからないか……」

葵が言った。

「脱出できればの話ですが……」

有紀が言った。

「暗号が解けてないのか?」

「いえ、暗号は解きました……合っているとは思うのですが……ヘタに試して面倒な事になると厄介です。アマツカの事ですどんな仕掛けがあるか……」

歩が呟いた。

「答え合わせか……」

「歩さんには酷かもしれませんが……」

先日のアマツカの言動から、この島からの脱出には『歩が関係している』事はじゅうぶんに考えられた。

九条が言った。

「葵君……君の答えを聞かせてくれ…」

その時ちょうど美夢と容子が、皆の朝食を持って、戻ってきた。

葵が言った。

「では皆が揃ったので……始めますか…」


「謎解きを…」

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