④
……午後九時三十分……
葵の部屋をノックし、少しドアを開けた……チェーンは架かってない。
部屋の中は薄暗い、机の電気スタンドは光を発していた。
葵は………座っている。
中にいた葵は誰か来たことに気がついたが、振り向く事なく言った。
「早いですね……どうぞ入ってきて下さい……まだ作業中なので、少し待っていただかないと…」
中に入りドアを閉めた瞬間だった。
……パンッパンッ!
葵を目掛けて二発の銃弾が、葵を捉えた。
葵はそのまま机に座ったまま、机に倒れた。
「な、ぜ…?鍵を…か、けて…ないのは…犯人は…しらな、い…はず…」
言葉はそこで途絶えた。
葵は犯人に撃たれてしまった。
しかしその時だった。部屋のドアがいきなり開き、歩が犯人を取り押さえた。
歩は叫んだ。
「有紀っ!葵君をっ!」
隙をつかれた犯人は抵抗する間もなく、歩が用意していた手錠で拘束された。
美夢は勢いよく入ってきた。
「葵っ!葵!……」
有紀は美夢に言った。
「来るなっ!美夢っ!」
有紀は静かに首を横に振って言った。
「出血が多すぎる……もう…」
歩は壁を力一杯殴った。
「くそっ!やっぱり間に合わなかったっ!」
美夢その場で泣き崩れた。
「葵っ!あ、葵っ!……いやぁぁぁぁっ!」
有紀は葵の遺体にベッドのシーツを被せ美夢に見えないようにした。
すると、九条達がやって来た。
九条はその光景を見るなり言った。
「これは?……いったいどういう事だっ!?」
有紀が部屋の明かりをつけると、犯人の顔が明らかになる。
九条は言った。
「君が犯人?」
歩が言った。
「葵君は……囮になったんだ…」
九条が言った。
「囮に?」
「ああ、脱出方法と犯人がわかったと…」
有紀が言った。
「自分が囮になるから、犯人を拘束してくれと…」
九条が言った。
「だからって……どうして葵君がっ!見損なったぞっ!歩っ!」
九条はそう言うと、歩の胸ぐらをつかみかかった。九条の表情は怒りに満ちていた。
歩は抵抗する事はせず、素直に胸ぐらをつかませた。
有紀は言った。
「もし自分に何かあった時は……脱出方法をメモにして残しておくと…」
九条が言った。
「それで僕たちだけで、ノコノコ脱出しろと?冗談じゃないっ!」
有紀は力強く言った。
「葵はっ!…葵はたとえ脱出方法を見つけたとしても…犯人……すなわち『X』に妨害されるのを見越して、この計画を提案した…」
歩は九条に言った。
「葵君を生かすも殺すも……俺たち次第だ…」
九条は歩の胸ぐらを離して言った。
「ずるいよ……君達も、この僕も…」
九条は犯人を見て言った。
「しかし、どうして君が…?」
犯人はニヤニヤしながら答えた。
「帰りたくなかったんだ……必要とされてる…帰っても居場所はないっ!」
歩は言った。
「だからって、殺していいのか?」
犯人は言った。
「与えられたんだ…力を…この島を支配出来る力を…」
九条は言った。
「力を?支配?……なにをバカな……」
犯人は続けた。
「あんた達のような頼りない連中を……無能だと証明したかったんだっ!彼女らに…」
歩は言った。
「彼女ら?…」
「そうだっ!与えられたんだっ!神にっ!…『アマツカ』にっ…」
……パンッパァーンッ!!……。
そこで銃声が鳴った……犯人に目掛けて……。
犯人は頭と胸を撃ち抜かれ…おそらく即死だろう…。
「余計な事をベラベラと…見苦しいですね…実に…」
一同は発砲した人物を見て、それぞれ目を疑った。
九条は驚きを隠せない。
「どういう事…だ?」
発砲した人物が言った。
「逆転の逆転ですねぇ…」
さらにその人物は続けた。
「犯人を拘束し…そして月島葵の残したメモを頼りに、脱出…。実に惜しかったですね……しかしゲームオーバーです」
歩は目を丸くして言った。
「どういう事だ?」
「フフフ……このゲームは月島葵が死んだ事によって、とっくに終わっているんですよ…現にあなた方は、この私に銃口を突きつけられ、絶体絶命の状況です…」
九条が言った。
「僕たちを殺すのか?」
「そうなります……ただ最後にあなた方の敗因をあげるとすれば……月島葵が『犯人』=『X』と思ってしまった事ですね」
有紀が言った。
「別けて考えねばならなかった…」
「その通り……なかなか楽しかったですよ……しかしもうさよならです……私の勝ちでね」
「誰が誰に…勝ったのですか?」
聞き覚えのある声に『X』はおもわず振り向いた。
皆が驚くその先にいたのは……。
美夢は泣きながら強く言った。
「……あっ、葵っ!……」




