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choice01  作者: 陽芹 孝介
第五章 新たなる悲劇と共に時間が動く
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三人の検死を、葵と有紀はしている。

美夢と容子は互いに抱き合い涙を……椿は下を向いて震えている。

歩と九条はただその場に立ちすくむしかなかった。

検死の結果……三人とも愛美と同じで、拳銃による射殺…。

九条が言った。

「山村さんは……この旅が終わったら…別れた家族に会いに行こうとしていたそうだ」

歩が聞いた。

「家族に?」

九条は続けた。

「ああ……昔、事業に失敗して多額の借金を背負って、家族は離散したそうだ。しかしその後…血の滲む努力をしたんだろ、借金の返済まであと僅かだったようだ」

椿は言った。

「この旅での報酬で借金が完済出来る予定だったようです…」

椿は泣いているのか……肩を落として下を向いている。

九条は拳を握りしめている……悔しさが伝わるほどに…。

皆は一度解散する事となった……皆、朝食をする気分ではなかったのだろう…。

部屋に戻った葵はいつもの仕草で考え事をしている。

髪をクルクル回している葵に美夢が言った。

「減っちゃったね……12人も居たのに…」

美夢はアイスカフェラテを差し出した……両頬には涙の跡がついている。

「無理はするな……美夢…」

ただ優しい葵の言葉にも、美夢は出来る限り、気丈に振る舞った。

「私だけ泣いてられないよ……皆頑張ってるんだから…」

「……そうか……」

美夢は不思議そうに言った。

「でも不思議よね……死んだ人が消えちゃう何て…」

「確かにそうだな……ありえない…」

「なんか……ああいうのを、天に召されるって言うの?」

「天に召される?」

「よく童話とかでもあるじゃない……天使が死んだ人を天国に連れていくやつ…」

「天使……天に召される…連れていく…」

葵は何かブツブツ言っている。

美夢は不思議に葵に言った。

「どうしたの?葵……ブツブツ言って…」

葵は突然叫んだ。

「そうか…そういう事だったのか!」

「美夢!僕たちは脱出出来るぞ!」


正午にパーティールームに集まった皆は葵の言葉に驚いた。

「脱出できるって…本当かいっ?!」

九条が、声を荒げた。

葵は口角を上げて言った。

「ええ……本当です…」

皆は驚きと、喜び、戸惑いか混ざった感じだ。

葵は皆の興奮を抑えるように言った。

「ただし、時間がありません……今晩脱出します…」

九条が言った。

「今晩?」

「はい……少し準備がいるので時間を下さい…そうですね、22時に僕の部屋に…美夢はそれまで歩さん達といてくれ…」

九条が言った。

「一人でいるつもりかい?危険だよ!」

葵が言った。

「犯人はまだわかりませんが……おそらく外部犯でしょう…皆さんにはアリバイがありますから……それに僕は死にませんよ…」

歩が言った。

「九条……ここは葵君に任せよう…」

有紀も歩に賛同する。

「そうだな我々には……どうにもならない」

二人に圧された九条は渋々納得した。

「わかったよ……ただしくれぐれも警戒は怠らないように…」

葵は九条に言った。

「感謝します九条さん…では僕は先に戻り、一眠りします…最近寝ていないので…」

有紀が言った。

「準備じゃないのか?」

葵が言った。

「寝るのも準備の一つのです……皆さんも今晩のために眠って下さい…因みに鍵は開けておきますので…一応声はかけてください…」

九条が言った。

「無用心だよ…」

「心配は無用ですですチェーンはかけておきますので…それでは…」

美夢が心配そうに葵に言った。

「葵……」

葵は美夢に表情を緩めて言った。

「美夢……心配するな……僕を誰だと思ってる…」

そう言うと葵は、美夢の頭を軽く叩いて、自分の部屋に戻ってしまった。

葵の出て行ったパーティールームは、しばし沈黙に包まれた。

容子が言った。

「葵君……大丈夫かな…」

美夢が答えた。

「大丈夫ですよ……あいついつも、ああなんです……じっとしてなくて…」

有紀が言った。

「美夢も大変だな……葵の面倒をみるのは骨が折れそうだ…」

美夢は少し考えて答えた。

「でも……じっとしている男は、つまんないでしょっ?」

有紀は少し驚いて……そして美夢を感心した…真意を最後まで言わない葵の事を、根拠なしで……ただ信じている。

有紀は言った。

「お前も強いな……美夢…」

「そんなことないですよ……すぐ泣くし…」

歩が言った。

「いや、美夢ちゃんは強い……俺たちも見習おう…」

九条が言った。

「そうだな……我ながら情けないが、葵君を信じよう」

こうして皆は葵の指定する時刻まで、各部屋で待機する事になった。

期待と不安が入り交じった、難とも言い難い気持ちを胸に…。

その時を待った。

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