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choice01  作者: 陽芹 孝介
第五章 新たなる悲劇と共に時間が動く
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先程まで座り込んでいた葵は立ち上がり、外に出ようとする。

それを見た歩は葵を止めようとして言った。

「どこに行くつもりだい?」

葵は振り向く事なく言った。

「広場ですよ……もう正午は過ぎました…」

歩は葵の腕を掴んだ。

「危険だ……君だって見ただろう?あの炎を……それに犯人は拳銃を所持しているんだぞっ!」

葵は歩の目を見て、言葉に力を込めた。

「その犯人の手がかりがあるかもしれないんです…」

歩は大声で葵に言った。

「君が死んだら終なんだぞっ!」

すると有紀が言った。

「だったら……年長者の私たちが、葵を守らねばな……行くぞ…」

歩は有紀に言った。

「何を言ってんだっ?!有紀まで…」

「こうなったら、こいつは引かないぞ……それは歩もわかっているだろ?」

葵は歩に言った。

「僕は自暴自棄になどなってませんよ…」

「だったら何故…」

「タイミングがよすぎます…」

「タイミング?」

「うまく言えませんが…察して下さい…」

有紀が言った。

「行くしかないな……私も気になる…」

歩は仕方なしに言った。

「しゃあないな……いいか?九条…」

九条は他の皆の様子を見て言った。

「わかった……ただし30分だけだ……必ず戻ってくれ…」

葵は九条に言った。

「感謝します…九条さん…」

順平が焼死した広場に向かった三人は、あらためてこの島の異常さを実感した。

焼けた芝や飛び散った土などが、キレイにもとに戻っている。

歩が言った。

「つくづく……驚かされるなぁ…」

葵は鉄のボックス付近を丹念にしらべている。

葵は言った。

「妙ですねぇ……何故ここまでキレイに?…」

すると葵は何かを見つけた。

それは『黒い樹脂製の小さな物体』だった……葵はそれをハンカチ越しに摘まんだ。

「何でしょう?これは?」

有紀がそれを見て言った。

「元は何かの棒か?…折れたような跡があるぞ…」

有紀の言うように、先っぽは折れたような跡があり、もう逆側の先っぽは熱で変形したのか…丸みがある。現状の長さは3cm程だ。

葵はそれをジッパー付きの袋に入れて保管し、それをまじまじ眺めて言った。

「ん?これって…」

有紀が言った。

「で……わざわざリスクを犯してまで、我々をここに連れてきた理由は何だ?」

葵が言った。

「流石は有紀さん……察しがいい…」

歩は驚いて言った。

「なに?…現場検証じゃないの?」

葵が言った。

「それもありますが……僕にはどうしても納得がいかない事があります…」

有紀が葵に確認した。

「私と歩に話してもいいのか?」

葵は目を閉じて、そして力強く答えた。

「あなた方は信用できます…」

有紀が言った。

「何故言い切れる?」

葵は自分の考えを言った。

「歩さんは……誰よりも命を重んじています。その歩さんがあなたを『戦友』と言った…理由はそれだけで充分だと思いますが…」

歩が言った。

「葵君……」

有紀が言った。

「そうか、ならいい……まぁ歩はともかく、私は犯人じゃないがな…で?何を云いたい?」

歩にはもはや突っ込む気力もないようだ。

葵は言った。

「どうも後手になりすぎています……それにあれだけ人間不信になっていた順平君が、部屋を飛び出すと思いますか?」

有紀が言った。

「確かにそうだな……順平の部屋は08番で、広場は反対側だ……呼び出された可能性が高い…」

歩が言った。

「でも順平君が死んだ時には、全員にアリバイがあるんだぜ…」

葵が言った。

「次の疑問がそれです。愛美さんが殺害された時は全員にアリバイがなかった……しかし、何故今回は全員にアリバイがあるんです?」

有紀が言った。

「たまたま……とも、言えるが……違和感は感じるな…」

葵が言った。

「それにタイミングが良すぎる……まだうまく言えませんが、犯人は僕たちの一手先を、常に行っているような気がします。全てを見透かされたような…」

歩が葵に言った。

「つまり……どういう?…」

葵が言った。

「犯人はやはり内部犯だと僕は思います…」

三人が広場で現場検証をしてるのを九条がパーティールームの入り口から見ている。

山村が言った。

「皆さん大丈夫ですか?」

「ええ…今のところ……もう戻ってきそうです」

九条が言った通り三人はパーティールームに戻ってきた。

九条が葵に言った。

「収穫はあったかい?」

葵が答えた。

「物的証拠になる物はとくに……しかし広場は焼けた形跡などは消えて、キレイになっていましたよ…」

山村が言った。

「異常ですね…」

葵は言った。

「しかしこれで、この島がプログラムで形成されてる可能性がより高くなりました…」

九条が言った。

「これからどうすんだい?」

「僕はこれから全力で脱出方法を考えます……ここを解放しない限り僕らに先はありません…皆さん出来るだけ協力を…」

皆に異論はなかった……今はそれにすがるしかないのだ。

九条が話を変えるように言った。

「組分けの話なんだが……少し変更しようと思うんだけど…」

歩が聞いた。

「どう組むんだ?」

九条が説明した。

「君達……葵君、美夢ちゃん……歩と片岡さんの組はそのままで、容子君と山村さんを交換しようかと…」

葵が言った。

「何故ですか?」

「一ノ瀬さんが……男に囲まれるのは、もう我慢の限界らしい…」

九条は自分で言ってて悲しそうだ。

葵は九条に同情しつつ言った。

「問題ないでしょう……確かに一ノ瀬さんには酷な環境だったでしょう……気分転換も必要です、僕たちの身の回りの仕事もしていますからね…」

こうして昼食を食べて、新しい組分けで一度解散し、夕方の6時に12番の部屋の前に集まる事にした。

犯人は拳銃や火炎瓶を所持しているので、時計台は止めたほうがいいと…光一が提案した。

部屋割も少し変更した。10番の部屋に葵と美夢、11番の部屋な歩と有紀が…1番の部屋に九条、椿、容子が…そして最後に2番の部屋に堂島夫婦と山村に決まって、解散した。

夕食を何事もなく終えて皆はそれぞれの部屋に戻った。

部屋に戻った葵は、髪をクルクル回している……考え事をしているようだ。

「やはり転送倉庫の機能には武器や、危険物はない……どうやって拳銃を入手した?」

「最初から持ってたんじゃない?」

「拳銃何てそう簡単に手に入る物じゃない…」

葵はそういいつつも可能性はあると思った。

九条は財界、政界様々なパイプがある…手に入れようと思えば手に入る。

歩は戦場カメラマンで武器弾薬がある地域で、シャッターを切っている……この中では一番入手が簡単に出来る。

しかし歩の人の命への執着は異常だ……しかも戦場カメラマンはその使命から武器を嫌う……そんな歩が人を、ましてや嫌いな武器で人を殺すのは考えにくい……。

山村は?……彼の素性は明らかになっていない……そして椿……彼女も素性は明らかになってない…。

……拳銃はどこから?……。

美夢が呟いた。

「裏サイトで手に入れたとか、よくニュースでやってるよね」

「裏サイトか……でもここは通信が…ん?まてよ……だとしたらあれは…」

「どうしたの?葵…」

葵は何かブツブツ言っている。

「だとしたら今までの僕の考え方がガラッとかわるぞ……そうすれば残るはあれだ…」

しかし葵の閃きは虚しく…またも悲劇が起こる事となる…。



……深夜……


(どうして俺が?…)


(残るは…俺だけだ…)


「俺はこんなとこで死ねないんだっ!」


……パンッパンッ!

銃声が二発響く……。


(やっと…家族に…会え…る…。取…も、ど…せる…と…)



……六日目…午前八時……



葵と美夢は朝の集合時間のため、警戒しながら外へ出た。

部屋を出た瞬間それらは、目に入った。

もうなれてしまったのか……驚きはあったが、衝撃はあまりなかった。そして、お約束のあの臭い…。

「あ、葵…」

美夢は葵の腕を掴んだ、声は弱々しかったが…腕を掴んだ力は強かった。

葵たちを確実に追い詰めるように…それはあった。

02番の部屋の前に…。

堂島夫婦と山村の死体が…。

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